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季節のない街 (新潮文庫)

季節のない街 (新潮文庫)

季節のない街 (新潮文庫)

作家
山本周五郎
出版社
新潮社
発売日
2019-06-26
ISBN
9784101134901
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ジャンル

季節のない街 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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シナモン

図書館本。読み始めてこれは一体いつの時代の物語なのだろうとその世界観に入り込むのに時間がかかりました。どれもその日をやり過ごすのが精一杯の貧しい暮らし、最後まで救われることもなく淡々と続く短編集。中でも、幼い男の子が食中毒であっけなく亡くなってしまう話はもうなんといって良いのやら。そんな街に住む人たちが個性豊かに生き生きと描かれている。現代にも通じる所もあったりして。今も昔もいろんな人生があり、いろんな人がいる。そして懸命に人生を頑張っている。人間臭さたっぷりの一冊でした。

2019/09/14

jam

宮藤官九郎の同名ドラマを観て読む。ドラマは震災後の集合仮設住宅が舞台だが、著者曰く「ここには時限もなく地理的限定もない」という昭和30年代、貧困にあえぐコミュニティを描いている。新聞の連載短編集という実話ベースの物語は、1話ごと人物描写を中心に淡々と進むが、住人達は理知には疎い人ばかりで滑稽でさえある。けれど、回が進むにつれ、その弱さや浅はかさに尊さや美しさが宿るように感じられたのは、彼らの生の切実さゆえか(山本の文章ゆえだけど)。「プールのある家」では、父親の戯言をただ聞き続けた少年の最期の言葉に落涙。

2023/11/15

竹園和明

昭和30年代が舞台となると、このような日常を送る人達の街が日本各地にあったのだろう。本作は、例えば醤油の貸し借りをするような“向こう三軒両隣”的な仲良し長屋の日々を描いたものではない。この街は、家というより小屋に住み、貧しい暮らしながらそれを恨むでもなく、今日一日の糧を得ながらそれぞれ淡々と日々を送る人達の街だ。しかし不思議な事にそれが逆に色濃い人間臭さを感じさせる。「枯れた木」の悲哀は特筆すべきもの。飽食暖衣に慣れてしまった我々だが、生きるというストレートな行為の超然さを見せられた気がした。

2023/12/11

ソーダポップ

中通りに住む六ちゃんに始まり、いわゆる社会の底辺通称「街」で生きる人々を十五の話で描いている。曲軒と云われた周五郎らしい作品群であった。文中登場する比喩群表現は、自分の脳内に刻み込まれるようで、私的には素晴らしい作品群であった。全体を通して、日本人のおおらかさ、人の大きさ、人の器量と云うこと、大いに切なさも感じた。笑えるしどこか庶民目線で共感できる話しが沢山あった。周五郎の後書きで、この「季節のない街」は、都会の「青べか物語」と云っていいほど共通点が多いと書かれてあったが、なるほどと納得が出来ました。

2023/05/21

Apple

きわめて、濃いドラマチックな小説だと思いました。街の住人たちを主人公とした連作短編小説の形式でありますが、情緒的な部分と、貧困からくるワイルドさが併存していて、本作の面白い部分だと思いました。重厚さがあり、読むのに体力が費やされたように感じました。ボス面で存在するネコが出てくる話が面白かった気がします。生々しい物語の中に、所々ありもしないような想像的な世界観が挟まれていたのが印象的でした。

2023/07/22

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