焔 (新潮文庫)
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焔 (新潮文庫) / 感想・レビュー
おいしゃん
谷崎潤一郎賞作品。とにかく不思議な作品。キャンプファイアを囲みながら不気味な小噺を語り、一人ずついなくなる…というような内容。それぞれの語る内容も、人からカラスになったり、お金になったり…存分にカオスを楽しめた。
2022/06/22
みこ
初読みの作家。炎を囲む男女が自分の話をすると消えていく。不思議な世界観。その話の内容もオカルトのようなホラーのような非現実性が強い。得体のしれない天変地異で世情が不安定になったり、民族意識が高まって人々が排他的になったりとここ最近の世界情勢を反映しているかのようだが、発表が2018年とコロナ前のようなので作者の慧眼がむしろそら恐ろしく感じてしまった。
2022/07/05
ちぇけら
あたりを見渡すと、象徴としての救済はいたるところで俺たちに手を伸ばされるのを待っている。冷を取るため自ら回転する人びと、ところ構わず泣いてしまう急性落涙症候群にかかりやがて眼になっていく人びと、カラスになったひと、地球になるために大地に溶け込んでいくひと。べつのなにかへとうつり身をとげること、それが生きていくことであり、俺たちは物語ることでそれが実現できる。ことばを発する。それが物語になっていく。俺はその物語に出てくるカラスであり焔であり地球だ。俺は俺でありあなただ。そう気づいて俺は、物語に救済される。
2022/10/23
ヨノスケ
不思議な感覚の短編小説である。「きっと感じたことをストレートに表現しているんだな」と思った。であるから、読み進めると、どこへ連れて行かれるのか分からなくなってきて、置いて行かれそうで不安になってくる。この中では【人間バンク】が唯一ついていけた作品であった。あとは幻想の中を彷徨っているといった感覚。星野さん、私と同年代の作家さんとは思えないほど感覚に違いがあり、その深い想像力に驚かされた。
2022/07/23
jam
排外主義やヘイトスピーチが跋扈する現在の状態が続けばこうなるかもしれないという恐ろしい未来と、うまく行けば共生できる社会になるかもしれないという希望と両方描かれた小説だったと思う。希望を信じたい。
2022/07/26
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