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家族八景 (新潮文庫)

家族八景 (新潮文庫)

家族八景 (新潮文庫)

作家
筒井康隆
出版社
新潮社
発売日
1975-03-03
ISBN
9784101171012
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「家族八景 (新潮文庫)」のおすすめレビュー

兄弟の使用済みパンツも汚れがマシなものは使う? そんな不潔悪臭家族に、心を読めるテレパス女子が家政婦をした結果

『家族八景』(筒井康隆/新潮社)

 目の前の相手の心の中を覗きたい! そう思ったことはないだろうか。

 好きな人の心が知りたい時、トランプ遊びをしている時、詐欺師に騙されそうになっている時……そんな時に相手の心が読めたら、どんなに楽だろうか。人間は嘘をつくことで文明を発展させたらしいが、たとえば相手の心の内を完全に把握できるようになり、嘘という概念がなくなると、我々人類は幸せになれるのだろうか?

『家族八景』(筒井康隆/新潮社)は、目の前の人の心をすべて読みとってしまう七瀬というお手伝いの女性が主人公の物語だ。タイトルにある通り、8つの家を転々としてお手伝いをしながらそれぞれの家族の様子を映し出していく物語だが、彼らが抱え込む闇はあまりに深く、テレパシーで相手の思っていることを読みとっていく七瀬の姿を見ると、人の心を読む能力が決して幸福につながるものではないことに気がつく。

 本書は、七瀬の心に雪崩れ込んでくる相手の思考をカッコ書きで記すことによって、読者が七瀬の立場を追体験できる小説である。そして、8つの家庭を転々としていくうちに、はじめは自分だけが優…

2023/10/19

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岡村靖幸「人間が好きじゃないと歌詞なんて書けない」 中高生時代に愛読した、少女の心の機微を描いたSF小説【私の愛読書】

 さまざまなジャンルで活躍する著名人たちに、お気に入りの一冊をご紹介いただく連載「私の愛読書」。今回は『岡村靖幸のカモンエブリバディ』(双葉社)発売に合わせ、岡村靖幸さんにご登場いただいた。

 本書は、岡村さんがゲストを招いて、俳句やラップ、コント、歴史、ポエトリーリーディングなどを学ぶNHKのラジオ番組が書籍化されたものだ。

 紹介してくださった愛読書は、ラジオスタッフからも「人間が好き」と評される岡村さんらしい、人間の心のうちを描いたものだった。

(取材・文=金沢俊吾 撮影=booro)

SF小説にハマった中高生時代 ──岡村さんの愛読書を教えてください。

岡村靖幸:筒井康隆さんの『家族八景』です。中高生の頃、SF小説が大好きで、星新一さんや筒井康隆さんを読み倒しました。筒井康隆さんだと『時をかける少女』『俗物図鑑』『狂気の沙汰も金次第』『俺に関する噂』『笑うな』『富豪刑事』。どれも大好きでしたね。『虚人たち』以降は難解になっていくのですが。僕はそれより前の、ドタバタしたスラップスティック・コメディと言われていた頃の作品が好きでした。

『家族八景』(…

2023/7/28

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家族八景 (新潮文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

ehirano1

あわわわわ、とんでもない本を読んでしまいました!「人間ほど恐ろしいものはない」とどこかで読みましたがこれを当に顕在化したのが本書。七瀬のサイキックを使って「人間の暗部」をこれでもかと云うくらい読者に見せつけます。読むにはある種の覚悟が必要と思われます。しかし、人間とはこういった「人間の暗部」は必ず存在するわけですので、意を決して「人間の暗部」に対面し貴重な疑似体験をすることは今後の人生に有用だと思います。

2016/12/03

青乃108号

人の心が読める超能力を持った18歳の七瀬が家政婦として働くうち、次第に家族の問題を炙り出していくという物語。高校生の頃、もう数十年前になるが筒井康隆の本ばかり読んでいて当然この本も読んでいるのだが、ほとんど記憶に残っていなかった。共学の学校に通っていながら当時物凄く奥手だった俺はクラスの女子生徒とまともに話した事すらない。そんな俺はこの本で男どもが肉欲の権化のように描かれている事をどう思っただろう。今まで生きて来て思う、残念ながら男ってそんな生き物なんだな。俺も例外ではなく。

2022/08/31

再び読書

透明人間しかり異能は人をしあわせにするとは限らない

ykmmr (^_^)

テレパシー能力を持つ、家政婦の七瀬。その図々しさと不思議な力を持つ姿が、TVドラマで話題になった二大家政婦にそっくり。テレパシーで先なども読めるからこそ、調子に乗って無鉄砲に動けるし、良い事悪い事、夫妻・親・子供…それぞれの立場、表裏の心情が読めてしまう。その感情の対比や動きなども、振り回されて、鬱になりつつも、絶妙に読まされてしまい面白い。人の生命にも入り込む力もあり、それが何というか…シリアスでサスペンス。

2023/02/09

🐾Yoko Omoto🐾

テレパス能力を持つ七瀬を主人公に、彼女が遭遇した八つの家族の赤裸々な深層心理を抉るストーリー。テレパスであるが故の苦悩も綴られつつ、小賢しい逞しさと少女特有の茶目っ気を併せ持ち相手のプロパティに合わせた立ち回りを身に付けている七瀬は非常に魅力的である。そして私はこの物語に人間の醜悪な本音というよりも、“理性”という足枷を無くした意識野においてここまで本能のままに動物的である人々に、逆に清々しささえ感じたほどだった。人を殺すといった狂気や打算的心情とは異なり、そこにあるのはただただ剥き出しの欲望なのだ。→

2015/04/12

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