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あのひとは蜘蛛を潰せない (新潮文庫)

あのひとは蜘蛛を潰せない (新潮文庫)

あのひとは蜘蛛を潰せない (新潮文庫)

作家
彩瀬まる
出版社
新潮社
発売日
2015-08-28
ISBN
9784101200514
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ジャンル

「あのひとは蜘蛛を潰せない (新潮文庫)」のおすすめレビュー

28歳、恋をして、家を出た——でも母の呪縛からは逃れられない…

『あのひとは蜘蛛を潰せない』(彩瀬まる/新潮社)

『あのひとは蜘蛛を潰せない』(彩瀬まる/新潮社)は、この世の中でもがきながら生きる「繊細な人たち」をあぶり出し、彼らの優しさや弱さをすべて優しく掬い上げるような恋愛小説だ。

 主人公の梨枝は、国道沿いのドラッグストアの店長。28歳、母とふたりで実家暮らし、そして性体験は一度もない。「自分はみっともない」といつも自分に言い聞かせ続けている。細かな部分に魅力的なものを持っているのにもかかわらず、全体的には何だかパッとしない女性といった印象だ。

 そんな彼女が、アルバイトとして働く大学生「三葉くん」に言い寄られ、二人は付き合うようになる。そこから物語は大きく動き出す。最初の大きな変化は、彼女が実家を出てひとり暮らしを始めることだ。

 彼女が自分のことを卑下する大きな理由として、「過保護な母親」という存在が見えてくる。そんな母親を疎ましく思いながらも、一方で「かわいそう」に思ってしまい、実家から出られなかった彼女の大きな変化。三葉くんとの恋模様と絡ませながら描かれる「親からの自立の物語」も本書の醍醐味だ。

 最初…

2018/11/26

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あのひとは蜘蛛を潰せない (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ミカママ

【再読】7年前に読んだときには、年下男子との恋愛にしか着目していなかったようだが(笑)、よく読むと毒親…とまではいかないものの、自分の型にはめて子どもを育てようとした母親と、娘(主人公)の苦悩なんかも上手く描かれている。娘の方でも母の心情をよくわかっているので、切り捨てることができない。難しいよね、母と娘。そしてやっぱり、年下彼氏が最高な件(笑)(笑)

2023/11/13

ミカママ

【2017年初読み】心の奥がムズムズしっぱなしの素敵な作品に出会っちゃった。「俺、ちゃんとするから。また、正月、こたつ、一緒に入って、寝たい」最強だな、年下男子!

2017/01/03

エドワード

梨枝は理由あって離婚した母親と二人暮らし。読んでいて思うのは、彼女が「きちんとしている」ことを後ろめたく感じていること。そういうこと、あるね。ドラッグストアで店長を務める彼女はテキパキと聡明だ。その彼女を「牛のようにボーッとしている」と評する母親。人は多面体だとつくづく思う。バファリン女への気遣い、兄夫婦、母親とのさりげない会話が優しい。学生バイト君との恋の行方は不安だらけ。今どきってこんな人多いね。「恥ずかしい」「みっともない」の意味が揺れている。様々な人の思いがみなストンと心に落着く、心地良い読後感。

2017/02/23

しんたろー

彩瀬さん2冊目。母親と2人暮らしのドラッグストア店長・梨枝の日常が描かれた物語は、正にドラッグストアでバイト中の我が娘と性格設定が似ていて興味津々で読んだ。大学生との恋愛や周囲の人々との日々が綴られ、普遍的題材なのに新鮮に感じる…解説で山本文緒さんが「デビュー時の宇多田ヒカルみたい」と書いていたが、瑞々しい文章は彼女の音楽と通づるものがあり、言い得て妙だと思う。梨枝の不器用な生き方は、時折ハッとする文学的表現+リアルな台詞+血の通った人物たちで描かれていて、素直に惹かれた。他作品も追いかけたくなった🎶

2019/01/10

🐾Yoko Omoto🐾

彩瀬作品初読み。母との摩擦を恐れ「みっともないことをするな」という正論に従ううちに、気付けば何一つ自分で決められない人生を歩んできた梨枝。そんな彼女が恋をして独り暮らしを始め、自分がどう生きたいのかを見つめ直していく。自分の全てに自信が持てない梨枝の「はずかしい」という卑屈さ、「かわいそう」と他人に向けるやや傲慢な感情、「ちゃんとする」という母から刷り込まれた生真面目さ。そんな感情の共存がリアルに刺さる。適度な距離感を模索しながら、確実に変化していくそれぞれの関係性が心に染みる、とても素敵な作品だった。

2017/03/13

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