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海 (新潮文庫)

海 (新潮文庫)

海 (新潮文庫)

作家
小川洋子
出版社
新潮社
発売日
2009-03-02
ISBN
9784101215242
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海 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

全体にやや軽めの短編集なのだが、例えば表題作「海」に登場する「鳴鱗琴」のように、随所に着想の煌きを見ることができる。しかも、それはキラキラ光るといったような煌きではなく、しっとりと、ほのかな輝きを見せるのであり、まことに小川洋子らしいのである。篇中では「バタフライ和文タイプ事務所」が秀逸。「睾丸」の「睾」が、この言葉だけのためにあるという発見も面白いし、「膣」の文字が、いつしか実態に変容してゆくかのような感覚に捉えられる幻妙さも実に巧みだ。巻末の「ガイド」は、残念ながらエンディングに余韻が乏しいか。

2012/07/24

ろくせい@やまもとかねよし

居場所がなかった人たちを描写、と小川さん。巻末収録のインタビューで語る。7人の居場所がなかった人たちを迎える人たちも見過ごせない。結婚の承諾のために彼女の実家を訪ねた男性、二十歳の記念に海外旅行する女性、大学医学部で論文を作成するタイプライター、祖母の十三回忌に向かう女性、子どもを宥めるバス運転手、定年間近のホテルドアマン、尊敬している母をうまく消化できない男の子。2ページの「缶入りドロップ」は傑作。数百文字の物語は心を震わせ感涙。さらに登場人物たちに馳せた想いは、心の共振を強め新たな感動をもたらした。

2021/09/30

抹茶モナカ

奇妙で、静かな物語を集めた短編小説集。何処か優しく、人柄も職業も不思議な登場人物達が物語を織り上げて行く。読んでいると、自分という存在の歪さに思いが至り、寄り添ってくれる他者の欠落している自分に孤独感を感じた。それとも、気付いていないだけで、多くの他者に包まれながら、生きているのか。静かな気持ちになる本でした。

2017/01/05

さてさて

年齢も立場も、そして境遇も色々な事ごとが全く異なる二人の人間が偶然にも出会い、交流を深めていくそんな時間を切り取ったこの作品。それはぎこちなく、所在なく、そして本来は関わり合うことなどないはずだった者同士の偶然の出会いから生まれました。偶然の出会いの中で何かしらのきっかけで緊張した二人の感情が打ち解け、あたたかさに包まれる時間が刻まれていく物語。こんな短い作品たちの中に、ふわっと印象に残る独自の世界を作り出す小川さん。静かな世界観の中に、人と人との優しい繋がりを確かに感じた、そんな作品でした。

2020/10/29

mae.dat

“糜”の無駄遣い。短編集と言うか、ショートショートでしょうか?1話、2話と読んで、う〜ん、どう解釈して良いのやら分からず。禁じ手なのかも知れませんが『インタビュー』とある最後の章を先に読みました。おぉ、著者による解説があった。本来なら興醒めかも知れませんが、これが無ければ迷子になっていましたよ。成る程。SFファンタジーと言うか、小川さんの空想の世界なのかな?さくらももこさんの描く『コジコジ』の様な物を小川さんが著したらこうなるのかと。違うかな?元来、淫靡な表現は苦手ですが、独特な艶めかしい世界もまた一興。

2021/06/03

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