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雪の練習生 (新潮文庫)

雪の練習生 (新潮文庫)

雪の練習生 (新潮文庫)

作家
多和田葉子
出版社
新潮社
発売日
2013-11-28
ISBN
9784101255811
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雪の練習生 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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こーた

その質感に圧倒される。映像が目に浮かぶ、であるとか、音が聞こえてくる、といった小説にはしばしば出会うが、その触れている手ざわりを、これほど確かに感じることのできる小説がかつてあっただろうか。ホッキョクグマのクヌートにふれてみれば、体毛がふさふさして、あったかい。またぼく自身がクヌートになって、雪のなかで毛布とじゃれ合って、くるまる。ホッキョクグマが繋いだ自伝。そうか、だからこんなにモフモフしているのか。え、ちょっとよくわからないって?いや理解をするんじゃなくて感じるんです。さあ怖がらずに、触ってごらんよ。

2019/02/08

nico

多和田さん流のウイットに富んだ文章に夢中になった。ソ連、西ドイツ、カナダ、東ドイツ、統一後のドイツを転々とする3世代のホッキョクグマの物語。ホッキョクグマ目線による人間社会に対する皮肉が面白い。ちっとも嫌な気分にならずサラリと読める所が多和田さんらしい。同じ種族同士で権力を争い、目まぐるしく変動する人間達の世界は、ホッキョクグマからすると滑稽に思えたに違いない。そして地球温暖化による北極の危機。これは笑い事では済まされない。人間達の勝手な振る舞いに翻弄されるホッキョクグマ達のその先を思うと切ない。

2018/11/17

Hideto-S@仮想本屋【おとなの絵本屋 月舟書房】

静謐な文体に乗って哀しいけれどユーモラスな『ひんやりと暖かい』物語が綴られる。サーカスの花形だった『わたし』は怪我で引退し事務職に転じた後、自伝を書き始める。それは反響と波紋を呼び、彼女の人生は思わぬ方向に流れ始めた……。ロシアで育ちカナダに憧れながら東ドイツに渡った彼女は娘を産み、その娘は息子を産んだ。『わたし』から始まるホッキョクグマ三代記。娘も孫もクマの矜持を持って懸命に生きた。ベルリンから日独2カ国語で作品を発表している多和田葉子さんの物語は、海外文学のような空気感を感じる。野間文芸賞受賞作。

2016/02/03

ちょろこ

言葉を心の中でリフレインしたくなる一冊。移りゆくドイツ情勢に絡めたシロクマが語るシロクマ三世代の物語。開いた途端、なんだか好きかも…なんて思いながら一気に読了してしまった。今の自分の気分にぴったりフィットしたのも大きかったな。特に印象的だったのはトスカとウルズラの世界。素敵な言葉の数々が雪の結晶のようにひらひらと心に舞い降りてきて、何度もリフレインしたくなる、そんな感覚に陥った。せつなく胸をざわつかせながらも美しさを忘れずに去っていくような各章のラスト一文も秀逸。

2018/05/21

thayami

三世代。作家、曲芸師、そして動物園のスター。ドレスデン大空襲から東西分離を経たベルリンの壁崩壊。移民から移民となる過程など、冷戦時代の解消と共に環境は自由になる一方、生き方は皮肉にも縛りが多くなる現代を描写。「時間の無力さ」を語る件が印象的。エッセイを読んだかのような読後感で、セイウチのシュールな言動もどこか憎めない。(笑)唯一、都会の冬の短さの件が気になるところ。サーカスと動物園、東西ドイツなど、人間が言動が齎した帰結の示唆も多々感じる。

2016/08/15

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