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重力の都 (新潮文庫)

重力の都 (新潮文庫)

重力の都 (新潮文庫)

作家
中上健次
出版社
新潮社
発売日
1992-12-22
ISBN
9784101274027
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重力の都 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

表題作を含めて6つの短篇を収録。著者の「あとがき」によれば「大谷崎の佳品への、心からの和讃」ということなのだが、血も地も共になんとも濃密な小説群である。書かれたのはいずれも1980年代なのだが、小説内の時間設定はいずれも戦前かと思われる。また、谷崎の描く性が繊細・優美なのに比して、こちらは逞しく、荒々しく野生の力に満ちている。そして、それが時には根源的な永遠のエネルギーに繋がるのだろう。しかも、それらは強く紀州の地の力と結びついてもいる。まことに中上ならではの小説世界だろう。

2017/08/13

こばまり

【再読】生暖かく湿った空気が頬を撫でる台風11号接近の夜、何故に私はかくもぬめぬめとした小説を手に取ったのか。官能というよりも女の卑しさや醜さ、穢さを感じ、ぞくりとしました。映像化は望月六郎監督にお願いしたいです。

2015/07/16

A_kiriko

空を駆けて来た神が欅の木に降り立った光景を見た女。藤高屋の稚児のような若旦那。路地に咲いた小菊の花。背中に彫った朱の蓮華の刺青からほとばしる血。節句の日の雄雛と雌雛のような喜和と立彦。餓鬼道に堕ちた小栗判官と照手姫。欲望ではない、静かに沸騰する血の昂ぶりが暗い情念を伴って存在を捉えるその刹那、まるで納まるところに納まったとでもいうように、引き合い絡み合う男と女。そしてそれらは、あるひとつの中心へと向かって凝集していく。私は、そこから立ち昇ってゆく言葉の輪舞をただ追うばかり。それは、声を立てたいほどの愉楽。

2019/05/27

メタボン

☆☆☆☆ 紀州、路地、荒ぶる男、女の匂う身体と言った中上ワールドに、盲目と刺青といった谷崎潤一郎の主題が重なり、独特のエロチシズムを醸し出している短編集。大店の放蕩息子の最期を見ずに済むことが仏の加護だと思う盲目のイモリの松「よしや無頼」。女の野生が男を惹きつけてやまない「重力の都」「愛獣」。盲目の女に女の中の女を見る「残りの花」。刺青をした男たちが蛇のように蠢く「刺青の蓮花」。幼いうちから性の愉楽を覚えた姉弟のうち、理性を持った弟の目を潰すことで親代わりの弥平とともに愉楽の世界を続ける「ふたかみ」。

2022/04/30

taku

中上健次二作目。『ふたかみ』が刺激的。幼き姉弟との戯れ。成長した美しき姉の我儘な愛情と清らかな残酷。男の性的倒錯にヘ・ン・タ・イというほめ言葉をあげよう。『春琴抄』への和讃だと述べている連作。なかでも、ふたかみは谷崎マゾヒズム&サディズムへのアンサーではないかと思える異質の一篇。他の篇も、少し息苦しさを感じさせる空間で情欲や猛りを発散させている。土俗的で逃れられない業のようなものがつくりだす磁場は『千年の愉楽』に比べると弱いな。

2016/08/26

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