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その姿の消し方 (新潮文庫)

その姿の消し方 (新潮文庫)

その姿の消し方 (新潮文庫)

作家
堀江敏幸
出版社
新潮社
発売日
2018-07-28
ISBN
9784101294773
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その姿の消し方 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ジンジャー(C17H26O4)

「引き揚げられた木箱の夢」「吐く息を吸わない吸う息を吐かないきみ」「黄色は空の分け前」靄の向こうの景色は捜せども茫漠として。薄日に浮かぶ人影は朧げにしか見えない。言葉にしまわれた新たな気配を見つける静かな喜びと昂奮。古い絵はがきに綴られた文面を読み解くにつれ、詩に沈んだ時が質量を持ち香り立つ。亡き知らぬ人の痕跡を求める中で出逢う人々とのやりとりは次第に心通い。ふいに、深い海の底が、胸のうちの塵埃が一筋の光に照らされて微睡みがほどけたよう。きっと時と時が繋がった。焦らず、焦らずゆっくり堀江氏の文章を味わう。

2019/02/18

南雲吾朗

一枚の絵ハガキに書かれた詩に魅了された主人公がその作者を探索しつつ、その過程で知り合った周辺の人々の関わり、共に過ごした時間、互いを思いやる優しい人の気持ち等を描いている。人の寿命と共にそれまでの経緯や気持ち経過、客観的な事実等も失われてしまう。残されるのは無くなった人への主観的な事柄。時の経過とともに移り行く儚くも美しい人生。時間、経過を素晴らしく美しい表現で綴られる。とにかく、本当に表現が素晴らしく美しい。「その空には白ワインの風味があった」この一文を読んだときに、あまりの美しい表現に震えが来た。

2019/06/06

佐島楓@執筆中

知的な観察者たる主人公と、謎の詩人の痕跡のふたつが重層的な世界を描く小説。

2018/08/03

くまさん

 不在の詩人ルーシェの言葉は「こちらの体調や環境によってくるくるとその相貌を変える」けれど、「吐く」の一語からサルトルを、「海藻」からジャック・プレヴェールを連想したり、「格子」を「蔀」と訳してみせたりするところに「私」の豊富な素養がにじみ出る。矩形の詩はその相似形のごとく、ページに埋め尽くされた矩形の散文を生む。読むことと書くことに静かに向き合う「黄色は空の分け前」、「波打つ格子」から「五右衛門の火」までゆるやかに連なる全篇が、燦然たる陽光が海底に浸透していくようにその文章そのものの魅力をたたえていた。

2018/11/18

ちゅんさん

なんて静謐で美しい小説だろう。 絵はがきに書かれた一つの詩に強く惹かれ、その詩人を探しその過程で出会った人たちとの交流などを書いた作品。詩を含めよくわからないことが多いのだが、わからないことがこんなにも心地いい作品もめずらしい。かなり好み。一応、小説みたいなのだがまるでエッセイを読んでるような印象をうけた。すこし須賀敦子に雰囲気が似てる。

2018/10/25

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