神の棄てた裸体―イスラームの夜を歩く (新潮文庫)
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神の棄てた裸体―イスラームの夜を歩く (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
イスラムの国々の性の真実相に迫るルポルタージュということだが、実態はアジアの様々な国におけるイスラム社会の底辺に位置する娼婦や男娼たちとのインタビューを通して描かれるアジアの暗部を直視するといった趣だ。それは例えばヒジュラの世界であり、イラクに暮らすクルドの人々や、ダッカのストリートチルドレンの明日なき今日の姿である。筆者は真摯にそうした社会に向き合おうとするが、無力感はいかんともし難い。ひとえに無力感にうちひしがれるばかりである。なお、本書でロヒンギャの実相を体感的に語っているところなどは得難いルポだ。
2019/03/11
扉のこちら側
2016年315冊め。著者の本を読むはこれが多分3冊目。関心はあっても実際に入っていくことが難しい世界を垣間見せてくれることを評価。ただ娼婦の少女を自分の宿へ匿ったはいいが結局は手を離すしかなかった結果は初めから見えていた。ずっと彼の国には居られないのだから。どうにかしようという気持ちはわかるが、取材に行っている(いずれ帰ってくる)のか長期滞在で支援に入るのかで自分の行動を律しなければならないと思う。
2016/05/07
レアル
イスラム圏内で著者が見たルポ。出稼ぎと称して、国に残した家族を養うため体を差し出す女。ここでは女として買ってくれる=人間として扱ってくれるから良い。故郷では兵士の玩具のように襤褸布のように弄ばれてたと語る女。貧困や紛争の国で生まれ、生き抜いていくための当然の価値観なのかもしれない。「性」という切り口からみたイスラム。日本では考えられない光景が描かれる。目を覆いたくなるような現実。読んでいて苦しくなる。。
2015/11/27
ころりんぱ
著者の他の本に比べるとずいぶん感傷的な文章で、石井さんが現地で目の当たりにした事や出会った人々に対して消化しきれていないものを抱えている感じを強く受けた。打ちのめされて来たんだなということが伝わってくるし、読者としても同じようにモヤモヤと居心地の悪い気持ちを味わった。イスラームの戒律や習慣について、日本の普通の感覚との隔たりが具体的な話を知ることで理解できた。それにしても、なんのために生まれて来るのかとか、生きる意味なんていう私たちがよくぶつかる悩みなんて全く意味をなさない世界。
2015/05/20
すこにゃん
体を売る幼い兄弟、イスラムの夜に働く旧共産圏の白人女性、性転換男の成れの果て、女ばかりの村の謎、一夫多妻制度の深い事情、不妊手術されて売春宿に売られる女性、大人の性玩具にされる浮浪児達、賄賂を貰って犯罪に加担する警察官など、読んでいる間ずっと苦い汁を飲んでいる気分だった。それでも彼らはそうでないと生きてゆけない現実があるのだ。
2013/09/03
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