宰相A (新潮文庫)
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宰相A (新潮文庫) / 感想・レビュー
ASnowyHeron
パラレルワールドの世界観がおもしろかったが、自分には合わなかった。
2018/03/10
またの名
困ったことに駄作と言わないまでも魅力を失ったのは、本書が描いた管理統制国家もショボく感じるほど刊行後に公文書と統計の改竄やポスト真理などの強権が広まってるから。作家業を続けたがるヘタレ主人公が母の言葉を支えに面白い「言葉の並べ替え」によって外界と関係しようとするのに対し、転生先の異世界の宰相Aは「戦争主義的平和主義」というこれ以上なく最高の言葉の魔術(詐術)を駆使して、本当は自分が別の者に統治されているだけの統治を進める。苦しい拷問など課さずとも権力者が友達の輪を拡張する点でも、小説の想像力を現実が凌駕。
2019/07/27
SAT(M)
「戦争的平和」を掲げ武力行使を善しとするパラレルワールドの「日本」を描いた作品。筆者自身の分身の小説家Tの視点から描かれているのですが、傍観者気質というか、ネットの住人気質というか…。粘っこく分析をして相手のアラを探すあの感じ…。体制側も反体制側も悪意のある描き方をしています。その一方、小説家T自身に関しては、一つ覚えに紙と鉛筆を求めるような、”ピュアな創作意欲だけを持った無力な無垢な存在”として描いているのがなぁ…。もっと汚れた主人公じゃないと、入り込めないよ、というのが正直な感想です。
2018/05/12
なぎさん
パラレルワールドの日本を描いたディストピア小説。題材としては面白いんだけど、色んな話の展開がイマイチ物足りなかった。今年は表現の不自由展の問題などもあり、もうこの作品の世界に現実が追いつきそうで怖い怖い…。
2019/12/20
ひろ
作家である主人公が母の墓参りに赴く最中、現代日本を悪辣に模したようなパラレルワールドに移動し伝説の反逆者として祭り上げられるという、村上龍の書きそうな小説。名指しはされないものの“宰相A”とは明らかに安倍晋三を指す。Aの陰茎の異様な大きさ、一方で性的に興奮しない様は、被支配者たる“旧日本人”、そして「大和民族の敗北」たる第二次世界大戦の敗戦を本質的には受け入れずとも徹底的な対米追従を続け抵抗(いや、判断そのものを)しない、現代日本の政治・社会そのものである。田中慎弥は国家的欺瞞を暴き、ここに晒している。
2020/12/29
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- ISBN
- 9784813804383