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夏の水の半魚人 (新潮文庫 ま 38-2)

夏の水の半魚人 (新潮文庫 ま 38-2)

夏の水の半魚人 (新潮文庫 ま 38-2)

作家
前田司郎
出版社
新潮社
発売日
2013-05-27
ISBN
9784101336329
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夏の水の半魚人 (新潮文庫 ま 38-2) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

前田司郎は初読。プロの作家にしては拙劣ともいってもいいような文体だ。ご本人もそのことを重々自覚していると思われる。そこで選ばれたのが、小学校5年生の男の子を語り手に選ぶという方法だったのだろう。そして、それはここではかなりの程度に成功している。品川区の一角に終始する行動半径の狭さは、まさに小学生の世界だ。私たちは、一昔前の小学生の「リアル」を追体験することになる。エンディングはことさらに印象的だが、何も解決しないことに不満な読者もいるかもしれない。しかし、それこそがこの作品を小説として成立させているのだ。

2015/03/31

新地学@児童書病発動中

消費税が3%だった頃の小学生のリアルな感情を描いた小説。三島由紀賞受賞作。あまり期待しないで読み始めたのだが、非常に気に入った。この小説の一番の特長は子供の視点で物語が進行していくところだ。友達づきあい、学校生活、女の子に対するほのかな憧れなどが、主人公の小学5年生魚彦の視点で書かれているので読者は小学生に逆戻りして、子供の頃の感情に浸りきることができる。現実の世界のことを描いていた物語が、海を間近にして幻想的なものに変わる結末が見事で、その余韻は読んだ人の胸の中にいつまでも響き続けるだろう。

2015/03/20

優希

夏の神秘がこめられているような作品だと思いました。それは夏の楽園でもあり神話のようなひとときなのです。

2023/07/08

sin

思い出したよ!自意識は苦しい。僕が僕がと胸の奥にざわめきつづける。僕をみて(傷つけたい)僕に構うな(いっそ滅茶苦茶になってもいい)、そして誰もがこころのなかで叫んでいるんだ!愛しているが解らなくて「愛してくれ」という子供たち?そしていまでも訴え続けている「解って欲しい」と、ただそれだけを…

2014/06/18

えりか

魚と話せるお母さんをもった小学生の僕、魚彦。魚彦とは母親の初恋の相手の名前。つまり、ハマチ。子供は子供社会の中で必死だ。「こうするとみんなにかっこいいと思われるから、別にしたくはないけどする」みたいな行動基準なのだけど「でも本当は自分がしたいからしてる」ってとこまでは気づかないのも、また子供だからなのだろう。その考えすぎる思考が子供時代の息苦しさと無邪気さなのかもしれない。単純に考えるのは、複雑に考えるよりも難しいものだ。ラストの海のシーンが美しくて切なくて、胸を締め付ける。前田さんの作品もっと読みたい。

2018/04/28

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