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犬とハモニカ (新潮文庫)

犬とハモニカ (新潮文庫)

犬とハモニカ (新潮文庫)

作家
江國香織
出版社
新潮社
発売日
2014-12-22
ISBN
9784101339283
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犬とハモニカ (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

6つの短篇からなるが、やはり白眉は表題作の「犬とハモニカ」だろう。空港でのほんの一瞬の出会いから、人生の断片を見事に浮かび上がらせるのである。「袖すり合うも他生の縁」というけれど、ほんとうにそれだけのことなのだ。そこにこんなに何人もの人生を描いて見せるなんて。江國香織さんはやはり都会の作家なのだ。一方、「夕顔」は残念。お話は源氏の「夕顔」そのままなのだが、これでは王朝的な「雅」が損なわれるだけで、現代的な「読み換え」は見られなかった。また「アレンテージョ」も『チーズと塩と豆と』に収録のものと重複している。

2016/01/18

こーた

ふたりがおなじものを食べ、おなじものを見て、ちがうことを想う。読書もそれと似たところがある。書かれたものをひとりで読み、またべつのことを考える。空港で、寝室で、ポルトガルで、平安時代に。異なる時と場所で描かれるのは互いの孤独だ。表題作「犬とハモニカ」。すれちがう孤独が見事交錯する。空港になど人生で数えるほどしかいったことがないのに、読んで数日経ったいまもそこに「居る」感覚が残る。驚異といっていい。陽気なポルトガルの空気感が眩しい「アレンテージョ」、増していく不穏さが鮮やかに反転する「寝室」も良かった。

2021/04/28

ケンイチミズバ

「去年の雪」を読んでいる最中に思い出したのがこの「犬とハモニカ」です。とてもおもしろかった。源氏の夕顔もある。空港のロビーでたまたま人生のある一瞬を共有する人たち、ひとりひとりのストーリーが想像できて自分がそこにいたような気分になる。今また読んでも、これはこれで好きな作品。多分、江國さんが描く金妻のようなかつてのどうでもいい恋愛をまた読みたいという強い欲求、期待があったのか、「去年の雪」には。辛口評になってしまった。恋に溺れる人、不倫の恋の終わり、とてもうまい。経験のある人はどんな気持ちで読むだろうとか。

2020/04/06

ケイ

短編6つ。『アレンテージョ』引き締まった身体付きをする豚、『犬とハモニカ』等身大のブタのぬいぐるみ、空想から妄想。ブタ~cochon~コッション フランス語のブタ、投げつけるための罵る言葉。シンデレラが出会う王子様はどこにもいない。不実なオトコなら、あっちにもこっちにも。そんなブタ野郎たちを女性の作家が描く。『寝室』の男はナイフの切っ先で肌を割いて、『おそ夏の夕暮れ』食べるなら剥いだ皮膚でなく肉を咬みきって。でも、2人が共に男なら、気だるいポルトガルの夕暮れに溶け込める…湿った気配。川端康成文学賞受賞作

2019/06/10

アン

様々な人が行き交う空港の到着ロビーでの出来事「犬とハモニカ」。恋人に別れを告げられ帰宅した夫が、眠る妻に抱く心のバランスの変化「寝室」。"おなじものをたべるというのは意味のあること"旅先での恋人たちを描く「アレンテージョ」。源氏物語「夕顔」江國訳など6篇。人生においての出会いと別れを細やかに掬い上げ、短編映画をみているよう。広い世界であっても、人の温もりに触れ交差する瞬間は確かにあり、何処かで人と繋がりながら生きている不思議さ。

2020/08/11

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