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悲嘆の門(下) (新潮文庫)

悲嘆の門(下) (新潮文庫)

悲嘆の門(下) (新潮文庫)

作家
宮部みゆき
出版社
新潮社
発売日
2017-11-29
ISBN
9784101369440
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ジャンル

悲嘆の門(下) (新潮文庫) / 感想・レビュー

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パトラッシュ

(承前)ミステリやファンタジーの要素より、ひとりの青年が壊れていくプロセスが中心となる。犯罪捜査の経験で人の業を熟知する都築に対し、孝太郎は全能の力で連続殺人の真相を探求してため血と憎悪を心に刻みつけてしまった。何とか逃れようとしたが、妹の友人を襲った悲劇で人であるのをやめて<無名の地>へ赴く姿は心が痛む。しかしそこで心を知ったガラに人間世界へ戻される結末は、言葉の力あればこそだろう。ところで孝太郎がガラに貰った「視る力」は残ったのなら、都築の薫陶を受けた優秀な刑事としての彼が活躍する続編が想像できるが。

2021/11/05

bunmei

上巻はサスペンス、中巻からはガラの登場でファンタジーに、下巻はダークホラーな展開。読み始めには全く予想しなかった結末にちょっと、中巻辺りは、肩透かしの部分もありましたが、そこは宮部ワールド! 最後はしっかりと引き込まれました。孝太郎の独りよがりの正義感に、人の業を重ねて描かれていたのかな…。そして、その業の代弁者こそがガラであったのかもしれません。ただ輪・領域・無名の地等、やや哲学的な語りの部分は、分かり難かったです。この作品は、きっと映像にして映画化したら、面白い作品になるんじゃないかな…。

2018/01/19

yoshida

描いているのは人間の業だと思う。異形の力に魅入られた三島は、私的な制裁を続ける。身近な者が被害に逢い、三島は臨界に達する。現実に生きる私達は、様々な感情を持つ。だが悪感情を過剰に持ち、悪罵を発し続ければ言葉は言霊となり自分自身に帰るだろう。私達は本当の意味では他者と分かり合えない。些細なことであらぬ誤解を生み、予想外の事柄で妬みを買うこともあろう。その逆もまた然り。そんな想いを抱えながら歩くことが、生きることだと思う。マイナスな感情ばかりに偏らず、どこかで小さな幸せや希望を見つけ生きる。私はそう在りたい。

2021/01/11

サンダーバード@怪しいグルメ探検隊・隊鳥

連続殺人事件の絡み合った糸が次第に解かれてゆく。<始原の大鐘楼の守護人>ガラと共に<無名の地>へと向かう孝太郎。そこに存在する<悲嘆の門>で彼が目にした出来事。<言葉>というものが紡ぐ<物語>、存在はするが実在しないもの。上中下巻の長編を一気に読ませる筆力はさすが宮部みゆきというべきか。ミステリーとファンタジーが融合した物語。だけど個人的にはこの二つのジャンルを一つにするのは反則だよなあと思う。違った展開で読みたかったです。★★★+

2018/03/03

かみぶくろ

「言葉」や「物語」についての哲学的な考察を、ファンタジー世界の寓意をもって表現しようとした作品のようだ。が、個人的には徹底的にリアリズムで描いてもらった方が伝わったのではと思える。ネット社会における物語への渇望と悪の伝播のテーマは、作中の連続猟奇殺人が雄弁に語っているし。ただファンタジー世界のイメージの豊潤さはとても魅力的だったし、並行世界の存在自体が、現実と空想がない交ぜなネット社会、あるいは我々の脳内世界の寓意だと考えれば、なんとなくすごい作品のような気もしてくる。

2019/02/04

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