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西行 (新潮文庫)

西行 (新潮文庫)

西行 (新潮文庫)

作家
白洲正子
出版社
新潮社
発売日
1996-05-29
ISBN
9784101379029
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ジャンル

西行 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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けろりん

-そらになる心は 春の霞にて 世にあらじとおもひ立つかな-鳥羽院の北面の武士佐藤義清、後の西行が、二十三歳で出家する直前に詠んだ「空になる心」を、「うわの空になって落ち着きのない心」であると白洲正子氏は読み解く。そして、明恵上人の伝記から、最晩年の西行が若き明恵に語る「-我又此の虚空の如くなる心-」の境地に至った道程と歳月の間隙を埋めるため、西行の足跡を克明に辿り、その歌が詠まれた心の裡に迫る。桜を愛する心が、そのまま厭離穢土、欣求浄土の祈りへと昇華されて行く吉野山の絶唱。魂の行方を追求し続けた詩聖の旅。

2023/09/13

たま

正直なところ、私には西行の歌は意味が良く分からないことが多々ある。白州さんの解説によれば専門家間でも意見の相違があるらしく、巻頭の「そらになる心は春の霞にて 世にあらじともおもひ立つかな」も同じ。白州さんは【定まらぬうわの空】と取り、それがこの西行論の基本となる。辻邦生『西行花伝』の西行は辻氏の美学の具現のようだが、白州さんの西行は自然体。いずれせよ西行の魅力は彼の人生と歌の交錯、融合にあるのだろう。白州さんの西行論は西行の足跡を追う記録でもあり、崇徳院の香川から奧州平泉まで、土地の紹介も楽しい。

2023/03/21

こきよ

全てを捨てて漂泊しても尚、捨てきれぬ業が我々の前に歌として現出しているのだ。

2016/07/02

Major

元は北面の武士にして花鳥風月に自分の生き様と思ひを自由奔放なリズムで歌いこんだ天才歌人西行。この歌人についての評伝や論考は枚挙に暇がない。しかし、待賢門院に対する思慕・恋・敬愛が重なり合った西行の焦がれる思いに寄添って、西行の歌の文字面の吟味だけではなく自ら西行の旅の足跡及び詠歌の軌跡を追体験し、説得力ある解説・論考を試みている点において他の著作に抜きん出ていると思う。さすがに女性ならではの繊細な恋心への理解が深いと思った。

2020/02/02

Gotoran

23歳で出家し、1190年2月73歳で寂すまで平安末期の世を生き、出家人として方々を旅しながら多くの歌を残し伝説化された歌聖・西行。多くの謎に満ちた西行の足跡を辿りながら著者独自の西行像に迫る論考はさすがに説得力がある。西行を出家人・宗教者ではなく数奇者と捉えて、歌論のみならず、当時の時代背景などにも言及して、総合的に西行論が展開されている。著者の西行の歌を捉える感受性の高さに感服した。とても読み応えがあった。

2022/12/10

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