両性具有の美 (新潮文庫)
両性具有の美 (新潮文庫) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
著者も仰る通り、「両性具有」というテーマから横道に逸れている部分もあります。しかし、それがお茶をしながら縦横無尽に尽きぬ好きな事へのお話を聞いているような伸びやかさがあり、私は好きです。BLよりも匂い系寄りだけど、混同されがちな者にとって内容に大いに頷きつつも悶える(笑)「折口信夫と南方熊楠の嗜好に相容れず、袂を別れた柳田国男に対し、手厳しい事を言う一方、折口信夫の夜這いを退けた弟子に対し、苦言を呈すのに権威主義への忌避と一種の優しさを感じます。無性に大学時代の萌え友とこの本をテーマに話したくなりました。
2018/08/10
コットン
主に男色に関する連作エッセイ。最初がバ―ジニア・ウルフの『オルランド―』だったので読み始める。『女にて見ばや』は源氏の話の後にコクト―の画で東洋と西洋の違いを感じたり、『中世の花』の南方熊楠が「てんぎゃん」(天狗のこと)と言われて自身も気に入っていたとかが面白い。
2016/05/04
真理そら
世阿弥部分を読みたくて再読。結び部分の「『両性具有の美』というご大層な題名で書きはじめたが読者も私もそのうち忘れてしまったのではないかと思う」という記述通り男色の知識や能の解釈や南方熊楠の言う「浄の男道」の話題では『草の花(福永武彦)』を思い出したりしながら読み終えた。日本人が宦官やカストラートを輸入しなかったことについての解釈もなるほどと思った。南方熊楠の書いたものの話の飛びっぷりを楽しんでいる白州さんもなかなかの話の飛びっぷりだと思う読者である。
2020/12/01
レアル
「両性具有」と題しているので、もう少し幅広いものを期待していたのだがこちら男色のみ。やはり日本の歴史において「両性具有といえば男色」なのか!と読みながら納得していたのだが、女人御法度の僧だけでなく武士やそして文筆家まで、師弟といった関係や魂のやり取りといった形で「菊花の契り」を交わす。今の時代の価値観で読めば受け入れ難い内容かもしれないが、この当時は当たり前だったその契りへの想いと愛、そして少年の美ががここに描かれている。この本を読んで少し「男色」というものを理解できたような気になる。
2019/07/19
獺祭魚の食客@鯨鯢
性別を生物学的、社会的に分けられるのは、女の成熟(初潮)からその機能が終了(閉経)までである。 TPO(Time 時間、Place(場所)Occasion(場合)さえ外せばその戒律は解除された。 僧侶の稚子灌頂、武士の衆道、歌舞伎の女形、宝塚の男役などヘテロでないホモセクシャルが芸術のしてまで高められた。 「源氏物語」が卑猥とされないのも、純愛と倫理との相剋をもののあはれとして描いているからだろう。 現在、古典文学の性愛表現を楽しむのは、性の「現役」を引退した人たちである。現役女性は恥ずかしくて
2021/08/12
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- 出版社
- 左右社
- 発売日
- 2019-11-01
- ISBN
- 9784865282511