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生きる歓び (新潮文庫 ほ 11-3)

生きる歓び (新潮文庫 ほ 11-3)

生きる歓び (新潮文庫 ほ 11-3)

作家
保坂和志
出版社
新潮社
発売日
2003-08-01
ISBN
9784101449234
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生きる歓び (新潮文庫 ほ 11-3) / 感想・レビュー

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こばまり

死にかけた片目の子猫の話なぞ、普段なら徹底的に排除して読まない私。動物にまつわる辛い現実は身の回りだけで手一杯だからだ。でも、保坂さんは別。加えて最上の追悼と言える田中小実昌論。「ポレポレ」だけで分かった気になっていたことに反省。なんだか宿題をもらったような読書でした。

2016/03/22

翔亀

保坂さんの猫小説第二弾と思いきや、明らかに著者の体験を語るエッセイ。あとがきでも「あったことしか書いていない」と言明しているが、著者自らこれは、「明快に小説なのだ」と宣言する。併録の「小実昌さんのこと」も追悼文+作品解説と言っていいが「小説」だという。なぜか。ヒントは、保坂←田中小実昌←小島信夫という系譜をだどっていることで、いずれも小説らしい小説を書かなくなった。保坂さんは、小説を「立ち上げる」のが嘘くさく、哲学のほうが入っていきやすいという。この作品は、猫と小実昌さんを語りながら、生と死を、↓

2014/10/28

chanvesa

「だいたい生きるというのはそんなにいいことなのだろうかと私は思った。それは無条件でいいと断定できるのだろうか。」(37頁)と、「生きることが歓び」(45頁)はかけ離れているのでなく、二元論的な判断を避けているという土台は共通であると思う。そして「生きることの歓び」という言葉、意味が持つ広がり、寛容さは正にこのことが小説なのかもしれない。エッセイではなく小説なんだという保坂さんの宣言は、最初はよくわからなかったが、気になったこの二つの言葉から何となくそう思った。

2015/07/16

mm

2編。1。生後二、三週間の手のひらサイズの病気で親がわからない仔猫を家に連れて帰る。そして死ぬかもしれない状況から、生きるかもしれない状況への変化をじっと見守る話。2。田中小実昌さんの訃報を聞いて、彼との過去のやり取りを思いだし、過去の作品とのつながりを思い出し、死んでしまうことを何回も咀嚼する話。生きてるうちに聞けなかったことがあるとして、生きていてもいつまでも聞かなかっただろうに、死んでしまったら二度と聞けない話のように「お話」化してしまう。と言う記述に、ふんふんなるなると思う。印象的フレーズ多数有。

2022/04/08

しゅん

収録されている二作ともに死を巡って書かれているが故の「生きる歓び」。どちらも終わり方がよくて、盲目の少年ピアニスト(辻井伸行氏?)が夢を見る話で終わる『生きる歓び』も、「そんな小実昌さんが死んだことが変な感じがする。ぼくはこれを書いていたあいだ、外を歩いているときも、小実昌さんと一緒にいるようだったのだけれど」と締めくくる追悼小説『小実昌さんのこと』も、「見えないけど見える」「生きてないけど生きてる」という矛盾を含んでいて、だけどそれは言葉上だけでなく、実際に感じられるものであるということ。歓ばしい。

2017/05/23

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