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郷愁―ペーター・カーメンチント (新潮文庫)

郷愁―ペーター・カーメンチント (新潮文庫)

郷愁―ペーター・カーメンチント (新潮文庫)

作家
ヘッセ
高橋 健二
出版社
新潮社
発売日
1956-09-04
ISBN
9784102001073
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郷愁―ペーター・カーメンチント (新潮文庫) / 感想・レビュー

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新地学@児童書病発動中

ヘッセは愛の人だと思う。愛といっても甘ったるい感傷的なものではなく、この世の良いところも悪いところもすべて受け入れ、あらゆる困難を乗り越えて生きる土台になる愛のことだ。この愛は彼の自然の愛をする心から生み出されたものだろう。『郷愁』の中に描かれている自然は生気を帯び、瑞々しく美しい。この小説の中では人物描写と同じぐらいの比重を持って、南アルプスの美しい自然が描かれている。人間の中でたとえぼろぼろに傷ついたとしても、自然の中に入りこんで、陽射しや風、雲、青い空の恵みを受け取ればその傷を癒すことができる。→

2016/10/23

びす男

「人生からも友人からも、自分が与えうるより、ずっと多く受けるというのが、いつも私の運命だった」。素敵な作品だった。自然に囲まれた故郷から都会に出て、さまざまな経験をしながら、最後には故郷に帰って行く…。ありふれた話だが、主人公の変化を告げるエピソードがどれも素敵である。恋をした。詩を詠んだ。友を、人を愛した。ヘッセの文学には厳しさがない。どんな読者も愛し、諭してくれるような視線が行間から感じられる。意地悪な人、偏屈な人、身体の不自由な人。美しいもの、醜いもの、きたないもの。その一切を愛せばいい。

2015/06/05

猫丸にゃん太

郷愁はヘッセの処女作で、スイスの自然豊かな村に生まれた主人公が都会に出て再び故郷に帰るまでの人との出会いを詩的で牧歌的に描いた作品。様々な人との出会いによる喜びと苦しみが描かれており、主人公の人生から考えさせられる事は多い。人は生まれて死ぬまでに多くの人と出会う、留まる人も過ぎ去りし人も心の中のどこかで常に生きているので、存在を認識するとき会う事ができる。そしてヘッセが描いた様に愛に伴う苦しみをも受け入れて愛する事を愛したい。人との縁が月の石ならば、愛との出会いはシリウスの真珠、その奇跡を大切にしたい。

2015/06/08

佐島楓

日本語の訳に急流のようなうねりと美しさがあって、ヘッセのドイツ語がそのようなものであったことをうかがわせる。少年期のペーターを翻弄する感情のひとつひとつに共感し、かつての自分を見出せる。終盤枯れていくなかでどのように生きるべきか考え抜くペーターの苦悩は、20代の著者が書いたものとは思えない。ヘッセは若い頃読んでいたが、この作品は今回初めて読んだ。とても素晴らしかった。

2021/11/21

活字の旅遊人

まず、表紙の景色が好きだ。それでも本人にとって、つまらない田舎になってしまうのは、特に若い頃は仕方がない。でもその自然を感じる様子は、さすが芸術系の人だな。宮沢賢治的なものを思った。また、酒に対する思いが強く伝わる。感性はそれにより更に磨かれるのも、事実だ。これについては、鴨志田譲を思い出してしまった。更に、人間の演技、仮面性についても言及する。身近な人の死を数例経験し、やがて故郷を受け入れる。著者二十七歳時のデビュー作ということだが、五十六十くらいの人の心境に思えてしまう。ヘッセも続けて読んでいこう。

2021/07/14

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