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城 (新潮文庫)

城 (新潮文庫)

城 (新潮文庫)

作家
フランツ・カフカ
Franz Kafka
前田 敬作
出版社
新潮社
発売日
1971-05-04
ISBN
9784102071021
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城 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

物語内の時間はわずかに6日間である。そこまでに600ページ超を費やしつつ、城との関係で言えば、なんら本質的な進展はない。しかも未完である。そもそもこの小説に完結ということはあり得るのか。時間軸が延びたとしても、Kが城にたどり着くことは永遠にないのではないか。城そのものと村で生起する諸々の事柄は、それ全体として「世界」の喩であると言ってしまうことも、あるいは可能であるかもしれない。従来から指摘されているように、語りは三人称体をとりつつ、作家自身の一人称とも重なり合う。そうすると物語のあてどなきがごとき⇒

2022/08/19

こーた

手にした本は『城』というタイトルだった。測量師のKが、雇われて城へ向かうはなしだ。城とは何か。村へたどり着いたKは、城の周辺を歩きまわるも、門は硬く閉ざされ、その全貌は雪に覆われて遠く仰ぎみることができない。何とか城に連絡をつけようと、宿や酒場に出入りもするが、担当者はつかまらず、現れた助手は意味不明で要領をえない。仕事とは何か。とにかく城へ行かなければ。城へ行けば、何とかなる。Kは城へ、向かう?え、ちょ、向かえよ、城に。何やってんだ?行けよ!K!城に!あれ、これ何のはなしだったっけ。わからなくなって⇒

2020/05/02

ケイ

城、それは全く正体がわからず不気味で辿り着けないところ。城と違って存在ははっきりしているが、全く何者かがわからないのはKである。彼は本当に測量士であるのか。そもそも本当は何をしに来ていて、どうして出て行かないのだろうか。そこの人間はとても閉鎖的であるが、彼への興味を隠そうとしない。彼に近寄る者、距離を置く者、虐げる者…、彼への対応は様々で、その対応が彼らの性格を示しているかのようだ。人は他人から認められるようにしか存在しない…、特に最後のやり取りでそう思った。

2016/03/29

康功

オーストリアの少数派ユダヤ人として生まれたカフカは、幼少期から自分の存在する国をもたなかった。小説の中のKは、カフカの隠喩。城に測量士として来たはずのKは、城に到着することもできず、測量の仕事もすることができない。人間とは、職業が唯一の存在形式で、職業を持たない人は存在しないも同然である、と考えられる。現実世界にも存在する様々な不条理は、小説の中では滑稽に異様に表現されているが、そういう立場の人達は、沢山現代にもいるはずである。納得できない事も折り合いをつけて生きねばならない時も、、、ある。

2016/09/05

jam

ひと頃、カフカを好んで読んだ。カフカの不条理をどう解釈し、どう導くのか議論には事欠かなかった(誰とも議論はしていないが)。見方を変えることで神にも悪魔にも世界は傾くことを、カフカに学んだ。この「城」も例外ではない。久しぶりに読んだが感慨はない。そもそも、そういう物語であり、類推し分解し放逐するだけなのだ。このじれったい、意味を持つことを良しとしない、遠く近づけない、そして入れない城は、世の不条理の合せ鏡のように在るようで無いもの。未完であることがふさわしい作品であり、嫌いではない(いや、好きかも)。

2016/10/10

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