KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

誰がために鐘は鳴る(下) (新潮文庫)

誰がために鐘は鳴る(下) (新潮文庫)

誰がために鐘は鳴る(下) (新潮文庫)

作家
アーネスト・ヘミングウェイ
高見 浩
出版社
新潮社
発売日
2018-02-28
ISBN
9784102100172
amazonで購入する

ジャンル

誰がために鐘は鳴る(下) (新潮文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

えりか

やるせなさや哀しみに似た静けさが心を覆う。戦争の末端も末端の中で戦う者たちの苦しみや葛藤を描くことで、戦争の愚かさや不条理さ、残酷さを表し、また人が人を殺めることに正統性はあるのかということを問いている。罪を感じながらも、これは大きな勝利のための、自分の信じることのための殺人であると思うことで、心を慰めようとするアンセルモの姿は悲痛だ。教科書では◯と×が戦い◯が勝利としか書かれていないが、その中で多くの個の犠牲があるということを忘れてはならない。

2018/05/27

yumiha

ん⁉表紙の写真、キャパだ。(上)の表紙もキャパだったのねん(遅っ!)下巻では、緊張感の漂う場面が、次々と展開される。先を急ぎたい気持ちになったり、ゆっくり味わいたい気持ちになったり。生きて帰れないかもしれない思いに捉われ、さまざまに考えるジョーダンにも、目が離せない。「猫くらい自由奔放な動物はいない」という箇所では、『世界ネコ歩き』で見たヘミングウェイのキーウェストの家の猫たちを思い出した。共和党であれファシスト側であれ堕落した上層指導部と、そのコマとして消費される農民や労働者たちという構図は、同じだ。

2019/01/10

おにく

思いがけない結末に虚脱感を覚え、生き残った者たちに罵声を浴びせつつ、ボタンをかけ違った根本の原因は何だったのかと、ひと通りもだえ苦しんだ後でようやく、「ヘミングウェイが実際に現場で見聞きした体験をもとに、内戦の持つ悲惨さや嫌らしさまでも、見事に表現された小説。」という境地にたどり着きました。実際にこうしたゲリラは、規律や結束も薄く、他の部隊の敗走をかえってほくそ笑んだそうで、内戦末期には、多くの同胞が命を奪われ、国外逃亡を余儀なくされたそうです。

2021/04/02

コージー

★★★★★1930年代のスペイン内戦が舞台。義勇兵のアメリカ人ジョーダンが、現地ゲリラ隊と協力し橋の爆破を決行する。その3日間でマリアという女性と恋をし刹那的な幸福を享受しながらも、いざ命を賭して敵と対峙する。登場人物が非常にユニークで、読者を引き込む大きな要素となっている。また、戦争という過酷な状況がリアルに描写されており、ひしひしとその緊張感が伝わってくる。人間としての弱さや欲望と葛藤しながら、正義という建前のもとに使命を全うしようとする彼らの姿は、非常に頼もしくあり、美しくもあり、悲しくもあった。

2023/07/14

テツ

ヘミングウェイ自身が参加したスペイン内戦を描いた物語の下巻。愚かで悲しい戦争の中にだって当然のように人間の美しさは激しく煌めいていて、だからこそこんなことは起こしてはならないのだと、ウクライナが侵略されている今だからこそ強く感じる。戦争という災厄は人間の美しさも醜さもこれでもかと個人の中からも群れの中からも搾り出してくる。そこには芸術的な鮮やかさは確かに存在するけれど、そんなものは見なくていいのなら見たくない。久しぶりに全編を読み、作中で描かれた濃密な四日間から解放されてしばらくは疲労すら感じた。

2022/03/01

感想・レビューをもっと見る