熱い恋 (新潮文庫 サ 2-6)
熱い恋 (新潮文庫 サ 2-6) / 感想・レビュー
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未来を思い煩わずに瞬間を楽しむ30歳の働かない女リュシール、彼女を優しく庇護する50歳の裕福な紳士シャルル、そこに現れた女と同年代の貧しい美青年アントワーヌ。リュシールは「悲しみよ、こんにちは」のセシルのその後かも。サガンは男に対して父親と恋人を同時に求め、更に堅苦しい所有欲や恩着せがましい態度を許さない。互いに驚くほど情熱的に焦がれ合う関係。でも苦労人のアントワーヌと怠惰なリュシールが合う筈は無い。それでも離れないのは身体と唇の相性。これ以外の人生は無理よと開き直った様に美学を解き放つ著者30歳の円熟。
2016/05/08
背番号10@せばてん。
1987年10月10日読了。あらすじは忘却の彼方。
1987/10/10
noémi
ゲランのコンサルの時に、『シャマード』を勧められた。そのときにこの香水の名前はこの小説に由来すると教えられた。ものすごくフランス的なアンニュイな感じが漂う。たぶん若い頃に読んだなら、この小説に出て来る登場人物の気持ちはとてもじゃないが理解できなかっただろうと思う。人間はすぐに世間の常識をもちだして「こうするべき」みたいなスローガンを持ち出すが、しかしそうできない人間もいる。そして「永遠」の愛というのも嘘。やはりお金があるということは、それだけでかなり人を仕合せにもするのなのだ。あけすけではあるけれど。
2017/04/26
羽
☆☆☆ 「女心と秋の空」という言葉がしっくりくる作品。初老の男性シャルルに愛されている美しい女性リュシールと、金持ちの中年女性の若い恋人アントワーヌが出逢い、惹かれ合い、情熱的な恋愛をする。妊娠したリュシールは何かを「持つ」ことを嫌がり、アントワーヌも彼女以外を欲しがらなかった。この出来事の後、リュシールは再びシャルルの元へ舞い戻る。一緒に幸福になりたいと願うアントワーヌと、純粋にリュシールの幸福だけを願うシャルルの二人の間で揺れるリュシールの心は、まさしく秋の空。
2015/10/07
kolion
意志がないから野心もなく、執着がないからなにも持ちたがらない。セックスはするのに心の底からだれかを愛することがない。日々読書と怠惰のなかにうもれ退屈することもない主人公リュシール。アントワーヌへの恋は簡単に燃え上がり冷めていく。変わらずに愛をささげてくれるシャルルの落ち着いた愛情に後半、心温められた。そこまでシャルルを一途にさせたリュシールの魅力は何なんだろうか。「どうして私を愛してらっしゃるの」と訊くリュシールの問いに「あなたはたまにしか笑いませんが、永遠の一種の陽気さがある」と語るシャルルの言葉がいい
2016/09/26
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