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シェルタリング・スカイ (新潮文庫 ホ 8-1)

シェルタリング・スカイ (新潮文庫 ホ 8-1)

シェルタリング・スカイ (新潮文庫 ホ 8-1)

作家
ポール・ボウルズ
大久保康雄
出版社
新潮社
発売日
1991-01-01
ISBN
9784102338018
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シェルタリング・スカイ (新潮文庫 ホ 8-1) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

ボウルズは初読。これが著者最初の長編小説。この作品に描かれるサハラの砂漠世界はニューヨークからは限りなく遠い。空間的にもそうだが、アメリカやヨーロッパ的な尺度からする文明観からはさらなる隔たりがあるだろう。ニューヨークから逃れたポートとキットは、しだいにサハラの奥地へと分け入り、そしてそこに飲み込まれてゆく。アルジェリア(そこはアメリカ・ヨーロッパ文明の及ぶ地だ)に戻ったキットが言葉少なに「何もかもなくしてしまいました」と語るが、これはそうした喪失の物語であり、読後は強い寂寥感に支配されることになる。

2017/11/17

ケイ

虚無感のようなものを描く作家は多い。退屈さ、無為に過ごす耐え切れなさ。それは孤独に通じているのか…。ポールとキットとタナーの関係の描き方に、女性を突き放す冷たさに、作者の渇きを感じ、心がざわついた。持てる者達が、もはやその持つべき物で精神が満足できない時に救いを求めて目を向けるのは、肉体だけなのかもしれない。肉欲であれ、薬に頼るのであれ。砂漠に身を投じるのも、最後の快楽を得る手段である肉体だけは共にあるからだろうか。破壊への衝動はあっても、実際に滅びるのはこわい、それを活字にしたらこうなるのだろうか。

2017/06/19

まふ

結婚12年のポートとキットのカップルが倦怠期打破を目的に北アフリカに旅する。同行者は若いタナー。途中で旅は行き詰り、タナーとキットと列車内で許し合う。ポートは嫉妬に耐えられず独りで飛び出すが腹膜炎で死ぬ。キットはさまよって砂漠で隊商に巡り合い隊長に体を許し、その後ハレムに押し込まれて女どもの嫉妬を呼ぶ、そこを飛び出てさまよい最後に救われる…。現代文明の脆さを砂漠の旅で証明した、と思われる辛い物語であった。この手の作品(砂漠、隊商、ハレムetc)はどちらかというと苦手であり、静かに読んで終えた。G1000。

2023/11/27

NAO

主人公のアメリカ人夫妻は、人生に生き甲斐を見出すことができず夫婦生活にも限界を感じ、戦争の騒々しさ煩わしさから逃れ、本来の自分の姿を取り戻そうと北アフリカ行きを決める。自国では、裕福で自分の地位が完全にまもられていた夫妻は、それが世界中で通用すると思っていたが、砂漠という圧倒的な自然の圧力の中で、疫病と凌辱を体験する。パスポートを紛失し誘拐されてしまえば、公的な地位など消え失せ、自信も自意識も跡かたもなく崩壊する。世界の代表であるかのような自信をもっているアメリカ人に対する痛烈な警告といえる作品。

2023/12/29

こばまり

初めて原作に触れ、愛の不毛でなくむしろ愛の完結を描いているのだと気付く。泣きたくなる程美しい景色を見た時に似た、澄み切った気分だ。改めて映画を観直したくなった。

2017/06/01

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