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幽霊たち (新潮文庫)

幽霊たち (新潮文庫)

幽霊たち (新潮文庫)

作家
ポール・オースター
Paul Auster
柴田元幸
出版社
新潮社
発売日
1995-03-01
ISBN
9784102451014
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幽霊たち (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

この作品は、端的に言うならば、アイデンティティ・クライシスを描いているのであり、その限りにおいて、テーマそのものは20世紀的である。そのことは、ブルーが自らを形成したブルックリンのさまざまなモニュメントを度々回想することにも現れている。主人公ブルーは図らずも、行動ではなく思索と想像することとを余儀なくされる。最初それは相手との関係性にはじまるものの、やがては自らの存在理由そのものに及ばざるを得なくなる。そうした自己撞着の網の目から紡ぎだされたものが、ここに描かれた実に特異な物語世界なのだろう。

2012/07/27

zero1

これは哲学?目の前にある世界は鏡?それとも本物?自分以外は演劇?探偵ブルーはホワイトの依頼で謎の男ブラックを見張ることに。向かいのアパートから監視するがヒマで思索に耽る。文章は無機質、簡潔で原文は多くが現在形で書かれているという。登場人物は色で表現。「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(村上春樹)や「黒子のバスケ」(藤巻忠俊)に影響をもたらした?読んで「退屈」と思うか、「面白い!」と感心するか。試されているのはブルーではなく読者?NY三部作のひとつ。翻訳は東大名誉教授の柴田元幸。

2019/02/24

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

ニューヨーク三部作2作目。「まずはじめにブルーがいる。次にホワイトがいて、それからブラックがいて、そもそものはじまりの前にはブラウンがいる。」なんともオースターらしいシンプルで謎めいた導入。1作目の「ガラスの街」とやはり共通する点が多い。 自分の拠点を奪われることでの自己の喪失。親しい人たちに死んだ、或いはそれに近しいものとみなされ都会に身一つで放り出される孤独と無力感。都会に暮らす上で無意識に潜む虚無感とそれに対する恐れを眼前に引きずり出すような。 何も解決せず終わる感じとか文章の美しさとか、好きです。

2019/01/20

のっち♬

ニューヨーク三部作2作目。私立探偵ブルーはとある男を監視するよう依頼される。何も起こらない時間の中、主人公がひたすら回想を巡らせる前半からアイデンティティに対する様々な問い掛けが散りばめられており、必然的に思考の本質へ切り込むアプローチの純度と抽象度の高さが本作の特徴だろう。著者にとっての思考と書物の密接な関係がここに垣間見れる。終盤は存在の相対化と共にストーリーは加速、何もないところから刺激を生み出す彼の面目躍如ともいうべき作風。物語は具体性を伴って完結する、それはメタ構造のように次の物語の一部となる。

2021/11/18

藤月はな(灯れ松明の火)

ポール・オースター版『燃え尽きた地図』とも言える作品。登場人物の名称が『レボドア・ドックズ』を彷彿とさせるが、『レボドア』と違い、登場人物の個性がスルリとすり抜けていってしまうので読み始めは苦労しました。それは誰にもなれて、誰にでもなれない都会に住む匿名性と他者によって変容して役割を演じられる人の虚ろさを暗示していたのだろう。それにしても氷漬けになった遺体については『さざなみ』以外でも何かの映画でも聞いたことがあるような…。そして紹介されていたロバート・ミッチャム主演の『過去からの脱出』は是非とも観たい。

2017/07/12

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