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夜が明ける

夜が明ける

夜が明ける

作家
西加奈子
出版社
新潮社
発売日
2021-10-20
ISBN
9784103070436
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「夜が明ける」のおすすめレビュー

西加奈子が悩み苦しみ、全力で書き尽くした救済と再生の物語『夜が明ける』

『夜が明ける』(西加奈子/新潮社)

 この世知辛い世の中で、もっとも言葉にするのが難しいのは、「たすけて」という四文字だと思う。どんなに辛く苦しいことがあっても、「他の人はもっと頑張っている」「自分の努力が足りないだけ」…。そう思い込んで、「大丈夫」だと自分をごまかしながら生きている人はきっと少なくない。

 だが、本当はもっと周囲に頼っていいのだ。周囲と比べる必要なんてない。苦しかったらすぐに助けを求めるべきなのだ。そんなことを教えてくれるのが、西加奈子の最新作『夜が明ける』(西加奈子/新潮社)。直木賞受賞作『サラバ』から7年、本屋大賞第7位『i』から5年。若者の貧困、虐待、過重労働をテーマに、西加奈子が悩み苦しみ抜き、全力で書き尽くした渾身の一作だ。

 主人公は「俺」。名前は明かされないまま、物語は進んでいく。彼がアキという同級生と出会ったのは、15歳、高校生の時だった。アキは、身長191cm。フィンランドのマイナー映画に出ている俳優アキ・マキライネンにそっくりな男だった。「お前はアキ・マキライネンだよ!」。「俺」がそう話しかけたことをきっかけに2…

2021/11/19

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 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年10月号からの転載になります。

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、門脇麦さん。 (取材・文=齋藤春子 写真=TOWA)

 小学校から高校まで「むさぼるように本を読んでいた」と語る門脇麦さん。 「ずっと本を読んできたことは、今の仕事にも役立っています。作家さんの文才の深みを読んで吸収したことで、たくさんの言葉が自分の血肉になったというか。結局、自分の血肉になっている言葉しか発した時にも真実味を帯びないと思っています」  西加奈子作品は「ほぼすべて読んでいます」というほど長年のファン。 「西さんの本は、登場人物のごく私的な内容が書かれているのに、話が太くて、本の中の世界が広い。人生の熱量を感じられて、エッジも効いてる、絶妙なバランスが好きです」 『夜が明ける』は2021年に5年ぶりの長編として刊行された作品。 「世の中には『しょうがないよな』ってことがいっぱいあるじゃないですか。でもその『しょうがない』が…

2023/9/13

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夜が明ける / 感想・レビュー

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starbro

西 加奈子は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。久々の長編、著者の新境地でしょうか、厳しい底辺の社会で奮闘する若者たちの物語、表紙絵同様、読んでいて辛くなる作品でしたが、一筋の光は見えます。今年のBEST20候補です。 https://www.shinchosha.co.jp/special/yogaakeru/

2021/11/12

青乃108号

序盤は読みやすかった。2人が高校生ぐらいまでは。それからだんだん辛くなる。どんどん辛くなる。終盤は息が詰まりそうで、冗談ではなく窒息しそうで、とにかく早くこの物語からのがれたい、その一心で、くたくたになってなんとか読み終えた。なんとも不遇な2人の人生。この2人から見ると何て俺の人生は恵まれているのだろう。この本を読んだ上で放送業界に就職を希望する若者がいたら、その人に是非会ってみたいものだ。

2022/08/22

うっちー

さすがが直木賞作家。読ませる中に社会問題をしっかり埋め込んでいます

2021/11/23

bunmei

心が澱むような重苦しさに、足を踏み入れたような物語。貧困、虐待、性差別、過重労働、パワハラ、そして鬱…。現代社会が抱える様々な問題を次々と突き付けてくる。自分のエネルギーまでもが吸い取られていく感覚だったが、次の展開が気になる筆致力と凄まじい熱量を感じさせるのは流石に西さん。生きる事に不器用な2人が、底辺の生活の中で、這い回り生き抜く様は、痛くて心に響く。苦しいと声を上げなければ誰にも気づかれず、社会から見放されていく現実。その中で、最後に俺の後輩が切々と語る言葉に、著者からの力強いメッセージを感じた。

2022/03/02

けいご

この世は平等ではない。それが故に自分ではない何者かになろうと自分を覆い隠そうとする者や、現実に抗う者、弱者を痛めつける事で自分を優位にしようとする者、様々な者がいるがそのどれもが諸行無常。家族が死のうと心身が病もうと未来なんて知る由もなく時代は無常にも過ぎゆく。そして今日も自分の意志に関係なく終わる為の一日が始まる。明ける事のない世界の中にどっぷりと浸かりながら明ける事を願う事のそれぞれに目を背け続ける事とそうでない狭間で僕達は夜明けを待っている。そんな1冊でした★

2022/02/24

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