KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

地球星人

地球星人

地球星人

作家
村田沙耶香
出版社
新潮社
発売日
2018-08-31
ISBN
9784103100737
amazonで購入する

ジャンル

「地球星人」のおすすめレビュー

人はなぜセックスをし、子供を産むのか? “宇宙人”からはこう見えている!

『地球星人』(村田沙耶香/新潮社)

人間は、働くのもセックスするのも本当は嫌いなんだよ。催眠術にかかって、それが素晴らしいものだと思わされているだけだ

 芥川賞作家・村田沙耶香さんの2年ぶりの新作『地球星人』(新潮社)が刊行された。本作を手に取ったとき、このタイトルと表紙を見て「また、村田さんがすごいことをやってくれそうだ」と期待に胸が膨らんだ。

 私たちは、宇宙の中で自分たちの存在を表すとき、普通“地球人”と表現するだろう。だが、作品のタイトルは、“地球星人”だ。“人”が“星人”に変わるだけで、その言葉のもつ印象はガラリと変わる。この小説は、地球人とは相容れない存在――“宇宙人”の側から“地球星人”を見る物語なのだ。

 主人公の奈月は、小さいころから親戚や学校などの社会が求める“当たり前”の空気に馴染めず、自らを宇宙人――ポハピピンポボピア星から来た“魔法少女”――だと思い込むことで自分を保ってきた。彼女の持つ「宇宙人の目」から見た私たちの生活は、疑うこともなく本能に従い、子供を作り続ける「人間工場」だ。地球星人は、「恋愛をして子供を作り、労働をし…

2018/9/7

全文を読む

おすすめレビューをもっと見る

「地球星人」の関連記事

「見初められる、って なんておぞましい言葉だろう」――性的無理解。のみこんできた言葉を作品に託して ■対談 村田沙耶香×鳥飼茜

対談 村田沙耶香×鳥飼茜

結婚して子供を産むこと。それを強制されることへの違和。作風はちがえど、鳥飼茜さんと村田沙耶香さんの間にはとても似たテーマが漂っている。互いに作品のファンだったという二人の対談がこのたび実現。対話から見えてくる二人の「怒り」と「怖さ」とは?

(左)とりかい・あかね●1981年、大阪府生まれ。2004年デビュー。13年より連載を開始した『先生の白い嘘』は男女の性的無理解を描いた衝撃作として話題に。他の著書に『おんなのいえ』『地獄のガールフレンド』『漫画みたいな恋ください』『前略、前進の君』『ロマンス暴風域』など。

(右)むらた・さやか●1979年、千葉県生まれ。2003年、『授乳』で群像新人文学賞小説部門優秀作を受賞しデビュー。『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞受賞。芥川賞受賞作『コンビニ人間』は累計100万部突破。世界24カ国語で翻訳が決定されている。

  暴力には、興味と恐怖が半分ずつある(鳥飼)

鳥飼 村田さんの作品はもともと拝読していて、新作の『地球星人』ものめり…

2018/11/18

全文を読む

関連記事をもっと見る

地球星人 / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

ヴェネツィア

芥川賞受賞後の第1作。『コンビニ人間』とは大きくその趣が変わる。おそらくこの人は、自身の中に物語るべき種をいくつも内包しているのだろう。ただ、前作との間に通底性がないわけではない。自己と世界との違和=意思疎通の不可能性がそれである。奈月(物語の語り手)は、そのことの故に自分を「魔法少女」に仮託する。相棒であり、彼女が唯一信頼できるのはぬいぐるみのビュートだけである。そして、彼女の彦星のような恋人の由宇。彼らの子ども時代の物語はひたすらに一途で、その一途さゆえに哀切なトーンに彩られる。⇒

2022/06/02

starbro

村田 沙耶香、3作目です。芥川賞受賞第一作、近未来洗脳妄想青春小説、地球星人VSポハピピンポボピア星人でした。ポハピピンポボピア星は、M78星雲辺りにあるのでしょうか(笑)国策(人間工場・・・少子化対策;産めよ増やせよ&一億総活躍社会)批判小説なのかも知れません。本書は、今年のBEST20候補です。【読メエロ部】

2018/09/19

ウッディ

母親から否定的な言葉をぶつけられ続け、自分はポハピピンポボピア星から来た魔法少女だと思いこんだ主人公の奈月。祖父母が住む田舎で自分を理解してくれる従兄弟の由宇と秘密の関係を結ぶ。人間は生殖部品で工場の一部であるという考えに洗脳された社会の中で、塾講師から受けた性的ないたずらにより、自分はまともに恋愛もできない出来損ないの部品だと思い込む奈月の未来は?気持ち悪い、怖いと思いながらも頁をめくる手を止められず、彼らの言動を妄想だと切り捨ててしまえないのは、それが自我を護る唯一の手段なのかもしれないから・・・。

2019/01/22

抹茶モナカ

カフカが「世界と自己が衝突する場合、常に世界の側につけ」という趣旨の言葉を残していたように思うのだけれど、この作家の設定する世界に対する自己の異物感は徹底して世界に対して戦うに至る。この小説では、徒党を組む事までしてしまう。どう着地するのか、最後まで読み通してしまったのだから、作品として力があるのだろう、とは思うものの、知的好奇心より怖いもの見たさの感覚が強いような。この作風を掘り下げて行っても、深さ、重厚さとは別のものになりそうな、作家として痩せて行くような気がする。ほぼグロテスクな漫画のような本。

2018/09/18

absinthe

沙耶香様がまた凄い話を・・・。捕獲して工場に取り込み洗脳しようとする陰謀組織と逃れたいが捕まってしまいたい複雑な心境の自称宇宙人達の話。等と書くと誤解されるか?ある人が見れば機能不全夫婦。ある人が見れば愛にあふれる仮面夫婦。してその実態は?沙耶香様の切り口が冴え渡る。虐待に関する幾つかのエピソードは目を背けたくなるが、これもまた現実だ。これからの夫婦というのはこういう形が普通になっていくのかもしれない。『コンビニ人間』以上の出来かも。

2019/09/06

感想・レビューをもっと見る