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しろがねの葉

しろがねの葉

しろがねの葉

作家
千早茜
出版社
新潮社
発売日
2022-09-29
ISBN
9784103341949
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「しろがねの葉」のおすすめレビュー

どんな困難が襲いかかろうと生きることをあきらめない――戦国時代末期の石見銀山を舞台に描かれる銀掘たちの物語。直木賞候補作『しろがねの葉』

『しろがねの葉』(千早茜/新潮社)

 深い悲しみに身を置きながら、生き長らえようとすることは容易ではない。人生とは難儀なもので、何かの拍子に、生きるのも地獄、死ぬのも地獄…という事態に陥ることがある。ひどい苦しみの最中、人はどのように己の人生と向き合うべきなのか――。

 第168回直木賞にノミネートされた千早茜さんの『しろがねの葉』(新潮社)は、そんな難題に幾通りもの道筋を示す時代小説だった。

 物語は戦国末期、飢えや兵役の恐怖から脱出しようとしたある家族が、夜逃げを画策するも、村人に見つかり、幼い娘・ウメが一人で必死に逃げ切ろうとするところから始まる。ウメが迷い込んだのは仙ノ山。そこは現在、世界遺産にも登録されている石見銀山の要所。ウメは、シルバーラッシュに沸く石見銀山で、幾人もの銀掘を抱える天才山師・喜兵衛に拾われる。

 石見の人間は、昔から、銀を掘り、年貢に銀を納め暮らしてきた。ウメは、喜兵衛から、山で稼ぎ生き抜くための知識と、他言無用の鉱脈のありかを叩き込まれ、喜兵衛の手子(雑用係)として、鉱山の掘り口…いわゆる真っ暗闇の「間歩(マブ)」に出入り…

2023/1/14

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しろがねの葉 / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

千早茜の作品を読むのは9作目なのだが、本書はこれまでのものとはテーマも文体さえも全く違っており、ほとんど別人であるかのごとくである。そもそもが時代小説であることからして意表を衝いている。時は関ヶ原の戦いの前後、物語の舞台は石見銀山である。たとえ政権が代ろうとも、ここ銀山では何も変わらない。男たちは坑道で銀を掘り、死んで行く。女たちは子どもを産み育て、男の子を銀山に捧げて生きていくのである。本書はそうした宿業を描くのだが、それは作家をダブルバインドで縛ることでもあった。すなわち、宿業を巧みに表出する⇒

2024/01/09

starbro

第168回直木賞受賞作・候補作、5作目(5/5)、直木賞発表前にギリギリ何とかコンプリートしました。千早 茜は、新作中心に読んでいる作家です。本書は戦国時代の経済を支えた石見銀山に棲む鬼娘の哀しい物語、直木賞受賞も納得の秀作でした。少し銀の毒に痺れたかも知れません。先日の島根旅行で時間がなかったため、石見銀山に行けなかったのが心残りです。 https://www.shinchosha.co.jp/book/334194/

2023/01/19

ミカママ

想像とはまったく方向違いの作品だった。幼い頃、両親とはぐれ、石見銀山の山師に拾われたウメ。彼女の過酷な人生を綴ったものだが、彼女を愛する男たちがいい。ウメはそんな男たちに護られながらも、男たちは山での仕事で次々に命を落としていく。勝手にウメのお仕事小説だと思って読み始めたが、そうではなく彼女の一代記、そして(わたしにとっては)恋愛小説でもあった。良作。

2023/09/10

さてさて

『あんたは何故生きる』。そんな問いかけの先に壮絶な人生を生き抜いていく主人公・ウメの生き様を描いたこの作品。そこには、時代は違っても自らに誇りを持ち、気高く生きるひとりの女性の姿がありました。『銀を掘れば米が食える』という言葉の意味する光と影を鮮やかに描き出すこの作品。時代を超えてリアルにその”生”が感じられる生々しい描写に息を呑むこの作品。千早茜さんの濃厚な筆の力で、生きていくことの不条理さを古の世の人々の暮らしの中に鮮やかに描き出したこの作品。流石の直木賞受賞を感じさせる素晴らしい作品だと思いました。

2023/06/03

ビッグマックツトム

千早さんの直木賞受賞作。凄くおもしろかった。時代ものでもサクサク読めた。暗い闇夜の描写が卓越していて登場人物の鼓動が聴こえてきそうな内容の濃いストーリーだ。この時代生まれた土地や身分で仕事は選べず短命な仕事だが、銀掘りに夢を抱く坑夫たちが沢山いた。今より中身の詰まった人生だったのではないか?次々に夫を亡くす坑夫の妻も儚い。うめがヨキに首を絞められた場面と隼人が死んで龍への切り替えが早いのが少々ビックリした。石見銀山に是非観光で行って、うめが生きた時代へタイムスリップしてみたいと思った。

2024/01/31

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