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八月の銀の雪

八月の銀の雪

八月の銀の雪

作家
伊与原新
出版社
新潮社
発売日
2020-10-20
ISBN
9784103362135
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ジャンル

「八月の銀の雪」のおすすめレビュー

【本屋大賞ノミネート】就活連敗中の理系大学生がコンビニのベトナム人店員の秘密を知って…傷ついた人の心を癒す処方箋のような優しい短編集

『八月の銀の雪』(伊与原新/新潮社)

 人生とは、こんなにもままならないものなのか。年を重ねるごとにそんな思いが募っていく。周りの人はどうしてみんな幸せそうなのだろう。どうして自分ばかりが何をしてもうまくいかないのだろう。…もし、あなたがそんな風に思い悩んでいるのだとしたら、ぜひとも読んでみてほしい本がある。その本とは、『八月の銀の雪』(伊与原新/新潮社)。第164回直木賞候補作であり、2021年本屋大賞にもノミネートされた話題の短編集だ。

 作者の伊与原新氏は、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星物理学を専攻し、博士課程を修了したという人物。この作品にも、自然科学の知見が巧みに織りこまれ、それが物語をやさしく照らし出している。自然や生物には、こんなにも人間らしい姿があるのか。人生に行き詰まりを感じる人々が、今まで知らなかった科学知識と出会い、それに自分自身を重ね合わせることで癒されていく。そんな瞬間をみていると、読者も心に希望の灯りをともされたような気持ちになる。明るさを取り戻していく登場人物たちの姿に、私たちも前を向く元気をもらえるのだ。

 子育て…

2021/2/6

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 18回目となる今回のノミネート作品10作の中から大賞に選ばれたのは、町田そのこ氏の『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)!

2021年本屋大賞受賞作 『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)

『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ/中央公論新社)

翻訳小説部門の大賞は『ザリガニの鳴くところ』(ディーリア・オーエンズ:著、友廣純:訳/早川書房)

気になる残り9つのノミネート作品は?

2位『お探し物は図書室まで』(青山美智子/ポプラ社)

3位『犬がいた季節』(伊吹有喜/双葉社)

4位『逆ソクラテス』(伊坂幸太郎/集英社)

5位『自転しながら公転する』(山本文緒/新潮社)

6位『八月の銀の雪』(伊与原新/新潮社)

7位『滅びの前のシャングリラ』(凪良ゆう/中央公論新社)

8位『オルタネート』(加藤シゲアキ/新潮社)

9位『推し、燃ゆ』(宇佐見りん/河出書房新社)

10位『この本を盗む者は』(深緑野分/KADOKAWA)

「本屋大賞」に選ばれた作品は…

2021/4/14

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《2021年本屋大賞》あなたが予想する大賞は!? ノミネート作品を総ざらい!

 全国の書店員が「いちばん!売りたい本」を選ぶ「2021年本屋大賞」のノミネート作10タイトルが決定した。毎年大きな話題を呼ぶ同賞だが、一体今年はどの作品が大賞に選ばれるのだろうか。気になるノミネート作10作品の内容を総ざらいしよう。

犬のコーシローが12年間見つめた地方の進学校に通う18歳の青春――『犬がいた季節』伊吹有喜 『犬がいた季節』(伊吹有喜/双葉社)

『犬がいた季節』は三重県の進学校を舞台に、18歳・高校3年生の生徒たちの物語を描く連作短編集。作中で流れる12年間は、生徒たちによって学校で飼われていた白いふかふかの毛の犬・コーシローが生きた時間。地方の進学校も、コーシローも、著者・伊吹有喜さんの母校と、そこに実在した犬がモデルなのだそうだ。伊吹さんはこの物語にどんな思いを込めたのだろうか。

 昭和、平成、令和…。時代を経て移り変わるそれぞれの物語は、その時代の音楽、流行、時事ニュースなどを背景に語られていく。地方都市ならではのリアリティも、随所に盛り込まれる。

「18歳で選択をした後にも人生にチャンスはあるし、そのときにはもっと選択肢が広が…

2021/2/16

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八月の銀の雪 / 感想・レビュー

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starbro

第164回直木賞候補作(既読5/6)となってから図書館に予約したので、漸く読めました。伊与原 新、初読です。誠実ながら弱者の市井の人々を描いた短編集、理系の著者ならではの科学のスパイスが効いています。直木賞候補作&本屋大賞6位(本書で10/10コンプリートです。)も納得の良作でした。オススメは、表題作『八月の銀の雪』&『海へ還る日』です。 https://www.shinchosha.co.jp/book/336213/

2021/05/29

kou

5本の短編で構成されていたが、どの話も自然や科学がテーマになっており、作者の優しさが、疲れた心に染み渡るような、心が温かくなる読後感だった。一気読みしてしまったが、眠る前に、1話づつ読めば、毎日、幸せな気分で就寝できたのになぁ~と、一気読みした事を少し後悔した。この著者の本を読むのは2作目だが、他の本も読んでみたい。

2021/03/03

kotetsupatapata

星★★★★★ 流石は本屋大賞にノミネートされた作品だけあって、読後優しく温かい気持ちに包まれる良本でした。 各々の章で人生の壁にぶつかって、もがいている主人公が、偶然出会った人との交流で希望を見出だし、又新たな一歩を踏み出していく 目を閉じるとその情景が浮かんでくるようです。 著者自身理学部卒業との事で、少し理系の語りはマニアックな点もありましたが、「珪藻アート」なるものの存在は初めて知りました。 どの話も良かったですが、個人的には「アルノーと檸檬」「玻璃を拾う」が印象に残りました😄

2021/02/17

bunmei

専門的な科学や生物の知識を織り交ぜながら、日常の一場面を切り取り、無機質な科学の世界と情緒的な文学を融合した作品。私のような科学音痴の人間にも、自然の摂理に改めて目を向け理解し合う場を提供してくれている。また、本作の5編全てが、様々な人々との出会いから始まり、他者との出会いや繋がりは、社会における人の成長において欠かすことのできない営みであることも、併せて伝えている。人の内面的な本質を見誤らなかったことで、物語の最後には、新たなる道を見つけ、歩み出そうとする主人公達の姿が描かれ、爽やかな読了感が残った。

2021/03/05

ウッディ

手際の悪いコンビニ店員のグエンは、ベトナムから地球の内部を勉強するために留学していた大学院生だった。就活が失敗続きで自信を失っていた堀川は、彼女と話をして、地球の内部に別の層があるように、表面とは違うその人の本質を見ようとしなかった自分を反省する。クジラの歌、ハトの帰巣本能、珪藻の精緻な姿、そしてそれを究める研究者のひたむきな姿が、挫折を味わい、生きる目標を失いかけた人の確かな道標となり、生きていく勇気を与える。自然科学と文学の融合という新しい試みがあり、今後も追いかけたい作家さんの発見となりました。

2021/10/02

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