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指の骨

指の骨

指の骨

作家
高橋弘希
出版社
新潮社
発売日
2015-01-30
ISBN
9784103370710
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指の骨 / 感想・レビュー

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ケンイチミズバ

「野火」と同じ世界が広がる。同じ南方で同じように生死をさ迷った何千何万の日本兵がいたのだから、幾とおりもの物語になっても結末は一つにたどり着くのだろう。海、空、雲、土、植物の息吹、マラリアや戦闘による傷で弱った兵隊にのしかかるほどの南国の圧倒的な生命力の描写。一日ごとに死んいく傷病兵。まともな薬もないまま寝かされ、国本に届けらるのは、よくて指の骨、悪ければ石ころ三つ。文章が素晴らしい。好きな作家になるかも。タイの遺跡で木の根に閉じ込められた仏頭を見たことがある。主人公のラスト、その光景がよみがえった。

2018/09/03

南方戦線で負傷した主人公が経験する野戦病院での仲間とのふれあいと迫り来る死。他の書籍で南方戦線の地獄を勉強して、こんな日本兵が沢山いたことは知っていましたがいたたまれない。徐々に忍び寄る死、人間として生きる力もなく、死ぬ気力もない極限の状態が続き、読んでいるこちらが早く楽になってほしいと思わず感じてしまいます。本土での幸せな家族との生活を思いながら死んでいく兵士の方々。本当にこれも戦争なのか?戦場の激しい銃撃戦の描写など無く静かな物語ですが戦争の悲惨さ残酷さがとても伝わる作品でした。

2015/09/09

文庫フリーク@灯れ松明の火

太平洋戦争ニューギニア島でのポートモレスビー作戦。常夏の南の島・敗残兵として撤退する幽鬼のような兵士の群れ。樹木に脊をもたれ、座り込んだ私。背嚢には日本へ持ち帰る戦友の遺骨。アルマイトの弁当箱の中、焼かれた指の骨が鳴る。私の中でリン、と鳴る。それは日常と非日常・正気と狂気の境界線が奏でる音なのか。小さな鉄の塊-手榴弾を両手で強く握り締め、ゆらゆらと、時に鮮明な回想。銃撃で負った傷のため担送された野戦病院。戦闘ではなくマラリア・アメーバ赤痢・デング熱で息を引き取る兵士たち。ゴトリ、と衛生兵の手で落とされる→

2015/06/03

中玉ケビン砂糖

、芥川賞は残念だったが、候補作中最もタイトで、しかもとんでもない密度で描かれている、この作品によって、これからの作家が描く「戦争小説」「戦場小説」というものが確実にアップデートされたと思わせる快作、太 平洋戦争下、ニューギニアでの一兵卒の体験を、資料や証言を丹念に取材して編んだ、ド正攻法の戦争小説に一見見えるが、「正攻法」と言うとどこかしら違和感を感じる、まるで鵺のような小説なのだ、冒頭不発に終わる自決用手榴弾は、嫌が応でも大岡昇平の『俘虜記』を想起させるが

2015/02/01

なゆ

新聞にこの作品と高橋さんが大きく取り上げられていて、気になったので読んでみた。確かに、戦争を知らない世代の新人作家が書いたとは思えない。でも、どこか淡々としてるからか、こういう内容のわりに読みやすく感じる。南方の島、野戦病院で傷を癒す負傷兵たち。死は日常で、亡くなった兵士の指を切り取りその骨を内地に送るという。ここで出てくる兵士がみな20代前半の若者で、戦死といっても病や飢えの末の死も多かったというのが何とも…。せめて、あの何十年か後の想像どおりになってくれるといいと思う。あの指の骨だけでも。

2015/06/02

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