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リリアン

リリアン

リリアン

作家
岸政彦
出版社
新潮社
発売日
2021-02-25
ISBN
9784103507239
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ジャンル

リリアン / 感想・レビュー

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みどり虫

昔、別れた男が言った「やり直したい。君としたいろんな話を忘れられない。他の誰と話してても、君だったらこう言うだろうなとか考えてしまう」って。え?忘れられんの体じゃなくて?…とは言わんかったけど、そんでやり直すことに頷きもせえへんかったけど、これ読んだら今さら思ったんよ。あの人、何の話を忘れられんかったんやろって。人って寂しいやんか。好きな人と居ても笑ってても、いつもずっとちょっと寂しいやんか。あの人はもう私を思い出しもせえへんやろうけど、私はいま思い出した。好きやったよ。これは私にとってそういう話やった。

2021/03/23

ちゃちゃ

リリアン。心の屈託を編み込むように無心で指を動かす。もはや戻ることのできないあの頃の心の疼き。海の底に沈んだような大阪の場末の街で、寄る辺なく漂う男と女。孤独な魂が引き合うように二人は出会う。「そやねん」「そやな」やわらかい大阪言葉で互いの心を包みこみながら、編み続けるリリアンの紐ように会話の着地点は見えない。そして、気がつけばひとりなのだ…。今作も大阪を舞台に、岸さん独特の哀愁に満ちた世界観が広がる。繋がれそうで繋がれない男と女の孤独や寂寥が、哀切なギターの調べのように、静かな余韻として深く心に響いた。

2021/04/20

nico

記憶の箱に入れっぱなしにして忘れていた”あの頃の思い出”たち。「なんか話して」と言葉をかけられ、次から次へと出るわ出るわ。記憶の蓋がどんどん開いていく。真夜中に二人、時間も気にせずとりとめもなく語り合う。いいな、こういうの。二人の間に漂う雰囲気。いい具合の脱力感がいい。岸さんの関西弁は柔らかくて優しくて、でもちょっぴり刺激もあって。心の奥をくすぐって。なんかちょっと泣きたくなった。なんや、知らんけど。古くて細い記憶の糸を夜の底から手繰り寄せて物思いにふけってしまう、そんな不思議な魔力のある作品だった。

2021/04/17

pohcho

年上の彼女との何気ない会話が続く。彼女にはつらい記憶があり、今まで誰にも話したことのなかった話をするのだが、その日の記憶はあいまいでどうでもいいようなことばかり浮かんでくる。深い悲しみや喪失感とは別のところで、人の記憶とはそういうものなんだと思う。その他にも二人はいろんな話をするが、お互いに心の蓋をそっと覗いてみるような、やわらかな会話がとても心地よかった。ゆらゆらと漂うように、自由で不安定でどこか寂しい。そんな主人公の生き方がそのまま小説の読み味になっていた。とても味わい深い小説。リリアンも懐かしい。

2021/04/20

しゃが

交通の便はいいが、ちょっと場末の安マンションに住むジャズ・ベーシストの男が近所の酒場で年上の女と知り合った…。人肌の温度のようなゆるく、音楽のリフレインような会話が流れ漂っていく…。彼女が醸し出す哀切と痛切がせつない。おおさかの言葉ってひらがなからできていることも心地よい。音楽はジャンルにより好みが違うが、文章もそうなんだ、ブルースの香りがする気だるさや擦れた感の岸さんが好み。タイトルの「リリアン」も秀逸、生きることのなかには役立つもの、目的のないものも、ただただ無意識に繰り返すものも日常には大事。

2021/03/29

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