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リリアン

リリアン

リリアン

作家
岸政彦
出版社
新潮社
発売日
2021-02-25
ISBN
9784103507239
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ジャンル

「リリアン」のおすすめレビュー

「今月のプラチナ本」は、岸政彦『リリアン』

『リリアン』

●あらすじ● 大阪でジャズベーシストとして生計を立てる男と、場末のバーで働く年上の女。なんとなく始まった関係は、他愛もない会話でなんとなく繋がっていく。だが一緒に暮らそうという男に女は……。表題作「リリアン」の他、生まれる前に亡くなった姉との会話を続ける女性を描いた「大阪の西は全部海」を収録した、哀愁漂う都市小説集。 きし・まさひこ●1967年生まれ。社会学者・作家。『断片的なものの社会学』(朝日出版社)で紀伊國屋じんぶん大賞2016受賞。『ビニール傘』(新潮社)で第156回芥川賞候補・第30回三島賞候補に、『図書室』(新潮社)で第32回三島賞候補となる。著書に『同化と他者化︱戦後沖縄の本土就職者たち』(ナカニシヤ出版)、『街の人生』(勁草書房)、『マンゴーと手榴弾︱生活史の理論』(勁草書房)、『地元を生きる︱沖縄的共同性の社会学』(ナカニシヤ出版・共著)など。

岸 政彦新潮社 1650円(税別) 写真=首藤幹夫

編集部寸評  

言葉と、音と、光が、ただただ降り積もる ここには起承転結も、ハッピーエンドもバッドエンドもない。…

2021/4/6

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リリアン / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

旅するランナー

大阪で一つ、我孫子で一つ、それなりに年取った二人が始めて逢った、ほんとの 恋の物語。場末の街の大人な二人の囁くような会話に、心の底までしびれるようです。優しく、切なく、消え入りそうな恋心に、泪が思わず湧いてきて、泣きたくなるのさ、この俺も。大阪を舞台にした小説ランキングというものがあれば、トップ10入り間違いなし。大阪人、ジャズファン、リリアン編みを知る世代に特にオススメです。

2021/05/20

ちゃちゃ

リリアン。心の屈託を編み込むように無心で指を動かす。もはや戻ることのできないあの頃の心の疼き。海の底に沈んだような大阪の場末の街で、寄る辺なく漂う男と女。孤独な魂が引き合うように二人は出会う。「そやねん」「そやな」やわらかい大阪言葉で互いの心を包みこみながら、編み続けるリリアンの紐ように会話の着地点は見えない。そして、気がつけばひとりなのだ…。今作も大阪を舞台に、岸さん独特の哀愁に満ちた世界観が広がる。繋がれそうで繋がれない男と女の孤独や寂寥が、哀切なギターの調べのように、静かな余韻として深く心に響いた。

2021/04/20

chiru

大阪の街と恋と音楽が、人生を優しく奏でる物語。大阪の場末の街で出会ったジャズべーシストとバーで働く彼女。ふたりは、夜と海が溶け合う一瞬の光のようにはしゃいだり、彼の部屋で抱き合ったり…。気の利いたセリフはないけれど、人を好きになる自然な気持ちが伝わってきて、胸がぎゅってなる。アドリブみたいに目的もなく続く会話に照れ笑いして「今この瞬間が幸せ」だと信じられたらいいな。記憶にそっと残す「」のない会話や、やわらかな大阪弁の言葉がとても好き。様々な糸で編む“リリアン”のように儚い夢が、どうか覚めませんように…★4

2021/09/29

chimako

大阪のどことも知らん、路地が浮かぶ。地元民じゃなければドアを開けるのも躊躇われるディープな店。見たことのあるファミレスもコンビニもあるだろうが、全く違う空気が流れている…と思わせる。大阪弁は優しそうに響くが中部から東日本育ちをやんわりと拒絶しているようだ。「来てもいいけど、よう分からんのとちがう?」と。音楽を生業とする男と子どもを亡くした女が、飲み屋やジャズバーで会話する。男のアパートや万博公園ややっぱりどことも知らん場所でぼそぼそと人の芯に触れる。コード進行のように呼ばれ呼び込まれ丸あるくおさまりたい。

2022/04/19

おくちゃん🌸柳緑花紅

大阪の片隅、どん詰まりのどんつきの町で出会ったジャズのベーシストとバーの女性。「そうなんや」 「そやな」 「ええなぁ 」優しく切なく交わされる会話。一人は自由で寂しい。二人は嬉しくて不安で幸福で怖い。ジャズの音色。リリアンの思い出。何ともいえない情感が「悲しい色やね」の歌詞と曲を伴って読んでいる私を包む。哀愁に満ちた作品。私の胸の奥の奥が反応する。そして私も彼に話しかける。あのな もっかいリリアンの話して。

2021/12/24

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