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全部ゆるせたらいいのに

全部ゆるせたらいいのに

全部ゆるせたらいいのに

作家
一木けい
出版社
新潮社
発売日
2020-06-17
ISBN
9784103514428
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ジャンル

「全部ゆるせたらいいのに」のおすすめレビュー

夫もまた、アルコール依存症の父親のようになってしまうのか――。家族の愛情に傷つけられた女性の叫び

『全部ゆるせたらいいのに』(一木けい/新潮社)

 愛情というものは実に不確かだ。それは絶対的なものなのか、そもそも存在しているのか、それすらわからない。けれど、そこに「家族の」という形容がつくと、途端に神聖視されてしまうことがある。「家族の愛情」は確かに存在するのだからと言われ、家族を愛すること、家族から愛されることがさも当たり前だと響くのだ。でも、家族だからこそ愛情が歪み、暴走し、途方に暮れることは珍しくないとも思う。そんなことを考えたのは、一木けいさんの新作『全部ゆるせたらいいのに』(新潮社)を読んだのがきっかけだった。

 本作の主人公は子育てに奮闘する母親・千映。卒乳したばかりの娘・恵は「まま」しか言えず、ひどい夜泣きを繰り返す。娘が泣き出せばシャンプーの途中だろうと駆けつけ、とんとんと背中をたたいてあげる。そんな日常に、千映は少しずつ追い詰められている。

 恵はかわいい。そこには確かに愛情がある。それなのに千映が追い詰められているのは、夫・宇太郎が夜な夜な呑み歩いているからだ。宇太郎の呑み方はひどい。泥酔し、吐瀉物にまみれ、物を失くし、記憶すら…

2020/9/16

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全部ゆるせたらいいのに / 感想・レビュー

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starbro

一木 けい 、3作目です。本書は、アルコール依存症親子三代家族物語でした。ダメ男に惚れるのは、遺伝するのかも知れません。期待して読んだ割には少しハズレ、著者としてはインパクトに欠けます。最近お酒を飲む人は減少していますが、アルコール依存症まで突き抜ける人と二極化しているのでしょうか?

2020/09/12

ウッディ

子供の世話を妻に任せ、連絡もなく飲みに行き、自分を無くすまで酔って帰ってくる夫にイライラを募らせ、心配する千映。彼女の脳裏にアルコールに依存し、暴力をふるった父の姿がチラつく。お酒を飲んでも解決することなど何も無いのにアルコールを止められないアル中の恐怖とそんな父を一人で背負ってきた過去は壮絶でした。時折見せる、父親としての優しい視線とそれでも酒に走ってしまう弱さがリアルでした。一件落着のようなラスト、妻の怒りと心配を理解し、改心したように見える夫・宇太郎が父のようにならないと思っていいのか疑問が残った。

2020/10/10

utinopoti27

血縁という名の鎖が全身を縛り付ける。愛された過去の記憶が、見捨てること、諦めることを許してはくれない・・。本作では、アルコール依存症の父親を持ち、逃げ場のない閉塞感に覆われつつも、捨てきれない家族愛との葛藤に苦しむ娘・千映の心情が、克明に綴られている。千映、母、父と視点を入れ替えることで、妻から夫、親から子、子から親への思いを対比させながら読ませる構成が秀逸。結局は一人寂しく死んでいった父。『制御できない強さで肚の底から突き上げてきた』悲しみも、やがて彼女の中で昇華されていくのだろうか。心震える作品だ。

2021/02/20

fwhd8325

どうにも気持ちが重く感じます。それでも引きつけて止まないのは、作家の力だと思います。デビュー作から読んでる一木さんですが、この作品は、本当に辛い気持ちになりました。どんな環境であっても、奥底で突き放せない。それは優しさではなく、弱さなのかもしれない。読者の心に在り方によって、感じるものが変化する作品だと思います。どんどんすごい作家になっていくようで、期待が膨らみます。

2020/08/08

ネギっ子gen

冒頭の「愛に絶望してはいない」の章題が良く、<浴槽のリボンのようにゆらめく紅色を見たとき、絶望の余り皮膚のどこかから血がにじみ出たのかと本気で思った。それほど腹を立てていた>も巧い出だしと感嘆。その後の<不安で叫びそうになる。この激しい感情を消す方法を知りたい。イヤーマフを装着することで音を遮断するみたいに、思考の葉っぱを枝ごと消し去りたい。不安の葉は一枚ずつむしり取ることができないから、それならいっそ幹ごと全部、なくしてしまいたい>に共鳴。切ない傑作!【BGM】みゆき「誕生」♪祈りながら 嘆きながら ⇒

2020/08/15

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