KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

母影(おもかげ)

母影(おもかげ)

母影(おもかげ)

作家
尾崎世界観
出版社
新潮社
発売日
2021-01-29
ISBN
9784103521426
amazonで購入する

ジャンル

「母影(おもかげ)」のおすすめレビュー

尾崎世界観4年半ぶりの純文学『母影』――カーテン越しに母親をみつめる少女の視線… その世界を巧みに描く筆致は圧巻!

 『母影』(尾崎世界観/新潮社)

 子どもという生き物は、何もわからないようでいて、どこか鋭いところもあって、その場に漂う空気を嗅ぎ取ることなど容易くできてしまう。そんな子どもだけがもつ視点を鮮やかに描き出したのが、尾崎世界観氏が描く『母影』(新潮社)。第164回芥川賞候補作にも選ばれた話題作だ。

 物語は母子家庭で暮らす小学生の少女の視点で進んでいく。少女には友達がいない。放課後はいつもお母さんの勤めるマッサージ店に入り浸っている。少女の居場所は、お母さんがお客さんを施術しているすぐ隣の空きベッド。カーテンだけで仕切られた場所に少女は身を潜め、お母さんの様子をうかがっている。少女から見えるのは影の動きだけだ。カーテン越しのお母さんの姿。仕切られる子どもと大人の世界。「お客さんのこわれたところを直している」というお母さんは、昔はおばさんやおばあさんも直していたのに、最近はおじさんばかりを直すようになった。そして、お客さんがおじさんばかりになってから、お母さんは日に日に苦しそうになっていく。

 少女にとって、世界はわからないことだらけだ。だけれども、…

2021/3/20

全文を読む

おすすめレビューをもっと見る

「母影(おもかげ)」の関連記事

第164回芥川賞は宇佐見りん『推し、燃ゆ』、直木賞は西條奈加『心淋し川』に決定!

 第164回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)が発表された。選考会は1月20日(水)、東京・築地の新喜楽で開かれ、「芥川龍之介賞」は宇佐見りんの『推し、燃ゆ』に、「直木三十五賞」は西條奈加の『心淋し川』に決定した。

【第164回芥川賞受賞作品】

『推し、燃ゆ』(宇佐見りん/河出書房新社)

【あらすじ】 主人公のあかりは高校生。勉強やアルバイトだけでなく、生きる上で必要なあらゆることが「普通に」「ちゃんと」できなくて、唯一頑張ることができるのが、「まざま座」というアイドルグループのメンバー・上野真幸を推すこと。 あかりは、現実の重みに耐えられない。彼女にとって、推しへの情熱を燃やし続け、解釈するブログを書き続け、自分でも頑張れることがあるのだという実感だけが生きる支えなのだ。 それなのに、推しがファンを殴って炎上し、彼女の世界から消えてしまったら…?

【プロフィール】 宇佐見りん(うさみ りん)●1999年静岡県生まれ、神奈川県育ち。現在大学生、21歳。2019年、『かか』で第56回文藝賞受賞、史上最年少で第33回三島賞を受賞。

【第164回直木賞受賞作…

2021/1/20

全文を読む

NEWS加藤シゲアキの意欲作も! 第164回芥川賞・直木賞ノミネート作品を一挙紹介

 日本文学振興会が主催する「第164回芥川賞・直木賞」のノミネート作品が、2020年12月18日(火)に発表された。それぞれの候補作を一挙紹介。「どんな作品があるのか気になる!」という人は、ぜひ参考にしてみてほしい。各賞の発表はきたる2021年1月20日(水)に行われる予定。《紹介順はそれぞれ著者名五十音順》

第164回芥川龍之介賞の全候補作はこの5作品

・宇佐見りん(うさみ りん)『推し、燃ゆ』(文藝 秋季号)  作品紹介を公開中  ▶「今月のプラチナ本」は、宇佐見りん『推し、燃ゆ』

・尾崎世界観(おざき せかいかん)『母影(おもかげ)』(新潮 12月号)  作品紹介を公開中  ▶尾崎世界観、文芸誌「新潮」掲載の『母影(おもかげ)』 が、第164回芥川賞候補作にノミネート。単行本は2021年1月29日に発売!   ・木崎みつ子(きざき みつこ)『コンジュジ』(すばる 11月号)

・砂川文次(すなかわ ぶんじ)『小隊』(文學界 9月号)

・乗代雄介(のりしろ ゆうすけ)『旅する練習』(群像 12月号)

第164回直木三十五賞の全候補作はこの6作品

・芦沢央(…

2020/12/18

全文を読む

関連記事をもっと見る

母影(おもかげ) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

starbro

第164回芥川賞候補作 既読4/5、尾崎世界観、初読です。 芥川賞候補作っぽい作品ですが、昭和の母子家庭の物語、あまり新鮮味がありません。 https://www.shinchosha.co.jp/book/352142/ https://www.creephyp.com/feature/omokage 2月は、本書で読了です。

2021/02/28

旅するランナー

小学生の少女の目を通して見えてくる世界観。子供が感じる孤独、喜び、母への思慕、変タイな大人の世界が、物悲しく描かれます。影の描写が素晴らしく、その意味でタイトルが秀逸です。この何とも言えない読書感は何なんだろう。

2021/03/21

いつでも母さん

幸せは自分の心が感じる。人と比べる意味はない。小学生低学年の私の世界は、自分の見える範囲、手に触れる範囲、声の聴こえる範囲なのだ。その世界の中で母と共にいることが絶対で自分の命と等しく、幸せなのだ。誰かが私を下に見て、バカにして憐れんでそれが一体なに?母と私の全ては今。危ういのは時の流れか。現実と想像の狭間で私は大人になっていくのだろう。それでも幸せと思うに違いない。幸せっていったい何?ー初めての尾崎世界観、あぁこの感覚は私の苦手な感じかも…(汗)そんなこと思ってしまった。

2021/03/03

いっち

主人公は小学校低学年と思われる女子。母は性的サービスのあるマッサージ店で働いているが、主人公はそれを知らず、カーテンを隔てた隣のベッドで、カーテンに映る母の影を見ている。客の「あるんでしょ?」の声が聞こえ、主人公は「知らないおじさんが探し物をしている」と考える。性的サービスがありながら、店で働く間に娘を隣にいさせる母はどうかしてるし、店側もおかしい。いくら知能が遅れている母親とはいえ。ただ、純粋で繊細な言語感覚のある主人公が良い。無知な主人公が母の仕事を知ったとき、どう感じて、どう行動するのか気になった。

2021/01/30

美紀ちゃん

私の中で尾崎世界観はクリープハイプのvocal.guitarという認識の方が強い。 音楽をよく聞くし、 フェスなどで、生でライブを見た事がある。 だからどんな本を書くのか?楽しみに読んだ。 尾崎世界観はライブのMCではハッキリとモノを言うのに、この本ではやんわりしている印象が強く、イメージにギャップがあった。 これはしっかりと文学作品だった。 なるほど芥川賞候補になりそうな文章だと思った。 尾崎世界観が多才で、素晴らしいと思った。

2021/02/20

感想・レビューをもっと見る