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組曲 わすれこうじ

組曲 わすれこうじ

組曲 わすれこうじ

作家
黒田夏子
出版社
新潮社
発売日
2020-05-27
ISBN
9784103533115
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ジャンル

組曲 わすれこうじ / 感想・レビュー

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メタボン

☆☆☆☆ 読みずらいけれど、不思議とそのたゆたうような文体は気持ちよく、日本語の美しさを堪能する。何てことはない物や事象を他の言い方でずらして語るその語り口が憎らしくもはまる。例えば菅原道真像を「左遷悲嘆者座像」など。稀有な作家だが、その作風からも多作には出来ないだろうし、高齢でもあるから、あとどれくらいの数の日本語の奇蹟に身を委ねることができるのかは危ぶまれもすれ、尊いことではある。

2020/08/11

遠い日々の、思い出話を聞いているようだった。畳の部屋で、ひだまりの中で遊ぶ幼年の姿が目に浮かぶ。今はもう遠くなってしまった幼き日々を、知らない誰かの話と重ね合わせて、過ぎ去った時間を懐かしく思い出す。わたしはまだ若く、幼き陽だまりの日々を思い出すことは少ないけれど、年をとり、命の終わりが近くなった時に、どのようにあの日々を思い出し、どのように感じていくのだろうか。これは、著者だからこそ書けた物語だと思う。懐かしいという感情が、胸に沁みた。★★★☆☆

2022/02/11

おかだん

日本語の美を越えて黒田氏の言語世界の中に漂い、酔いしれるかのよう。遠い日の有り様と今の心持ちが交錯し、同化していくその事もいつしか霧のように消えていくのだろうと、悲しくもなくただ儚い。私小説であろうとなかろうと、旧い家を棄てた経験のある自分にしてみれば、自らの思い出も読む程に溢れ出て僅かに苦しくもなる。固有名詞を使わない謎解きからの「澄んだ香りの五弁花」が棄てた家にも栄えていたあの花たち、と気付いた時、書物の渦に飲まれ、涙が溢れた。

2021/03/29

圓子

語彙力とはこういうものだ。というか、わたしの思う語彙力というのはこういうことなのだと感じる。回りくどいような、煙にまかれるような文章なのに、不思議とすうすうとしみこんでくるようなのが心地よい。淡い光と空気のなかできらきらする埃のように、つかめないけれど確実にそこにある・あった物や心のうごきを少なからず切ない気持ちで眺めていた。

2020/07/21

ようへい

初めて文章を目にしたときは、何だこれ⁉と驚きましたが、読み進めると、あれ?何故か読める…。そして徐々に、この文章をもって目で追っていたい、と不思議な感覚に。読書をするスタイルは人それぞれで、読んでいる本にも由ったりしますが、私はこの本は全くの無音状態の環境下で、この文章だけにくるまれるようにして読みたいと思いました。

2021/02/02

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