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騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

作家
村上春樹
出版社
新潮社
発売日
2017-02-24
ISBN
9784103534334
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「騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編」のおすすめレビュー

村上春樹は“ディズニー”を避けている?【連載】〈第2部 奇妙に符合する妙なキャラ編〉

『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』 『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』

「オールド村上主義者」が『騎士団長殺し』を読むきっかけになれば、というスタンスでお送りしている「村上春樹作品に共通することに関するあてどもない考察」。過去の作品との類似点についてあれこれとご紹介する第2部は〈奇妙に符合する妙なキャラ編〉と題し、村上作品に出てくる“人間ではないキャラ”についてあれこれ考察してみたい。 ■村上春樹は“ディズニー”を避けている? 『騎士団長殺し』には様々なキャラクターが出てくる。中でも一番強烈なのは「騎士団長」だ。身長は約60センチ、白い奇妙な衣装を着て、白い髭を生やし、剣を持っていて、「~あらない」という妙な話し方と、人に対して「諸君」と呼びかける。そして自らを「イデア」だと言い、100年、1000年単位で世界中あちこちを行き来していると言っている。さらに「騎士団長の形体を便宜上拝借した」と言い、その理由について「ミッキーマウスやらポカホンタスの格好をしたりしたら、ウォルト・ディズニー社からさぞかしねんごろに高額訴訟されそうだが、…

2017/7/2

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村上春樹作品は、おっさんと女子学生が“おっぱい”について語ることが多い?【連載】〈第1部 顕れる女子学生編〉

『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』 『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』

2017年2月、分冊となると2009~10年に出版された『1Q84』以来となる長編小説『騎士団長殺し』(新潮社)を上梓した村上春樹。本作はこれまでに多くの書評やあらすじ、謎解きなどが行われてきた。

そこでここでは趣向を変え、村上作品に繰り返し現れるものやアイテム、登場人物など通底するテーマ(あるいは変奏曲や通奏低音のようなもの)について考察を試みた。「昔は読んでいたけれど、ブームになってしまったので最近は読んでいない」という“春樹デタッチメント”な状態の「オールド村上主義者」の方が、往年の作品のような展開を見せる『騎士団長殺し』を読むきっかけになれば、というスタンスでお送りしたい。

その前に『騎士団長殺し』のあらすじを簡単にご紹介しよう。

主人公は36歳で肖像画家を職業とする「私」だ。妻から別れを切り出され、東京から新潟~山形~秋田~青森~北海道~青森~岩手~宮城とひとりあてどもなく車で旅をした後、福島県いわき市の手前で車が壊れたため廃車にして電車で帰京。美大の同窓…

2017/6/30

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『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』 『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』

「オールド村上主義者」が『騎士団長殺し』を読むきっかけになってほしい、というスタンスでお送りしている「村上春樹作品に共通することに関するあてどもない考察」。過去の作品との類似点についてご紹介する第3部では〈遷ろう謎の場所と通路編〉と題し、形を変えて幾度も出現する、この世ならざる場所や通路についてあれこれ考察してみたい。 ■穴、部屋、フロア、地底、非常階段、井戸……形を変えて現れる、謎の場所と通路 〈第1部 顕れる女子学生編〉で『騎士団長殺し』のあらすじをご紹介した際、「誰かがいなくなって、少々変わった登場人物が出てきて、否応なしに巻き込まれ、妙な場所へ行ったり、不思議体験をしたり、何かと戦ったりして、最後は日常へ戻る」という村上作品のある種のパターンが今回も繰り返されていると書いた。この要素の中で、村上が他の作家と大きく違っているのが「妙な場所へ行ったり、不思議体験をしたり、何かと戦ったり」することだろう。そこで大きな役割を果たすのが、謎の場所や通路だ。

『騎士…

2017/7/7

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騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編 / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

村上春樹はこれまでもそうした傾向はあったが、本作では一層に物語化への傾斜を見せている。その最たるものが騎士団長の造形だろうが、それは51「今が時だ」で頂点に達する。この章段では、まさに魔術的な跳躍がなされるが、それはある種の村上流マジック・リアリズムの駆使である。ただし、村上春樹自身は本書の中でもしきりに「メタファー」という語を多用しているのであるが。ただ、それ以降物語は収束に向かい、開かれた環は閉じてしまう。最期は予定調和的なものに終わり、しかもそれらが新たな「私」の個の円環から排除されるのは残念だ。

2017/02/28

starbro

第1部・第2部、1,000P強一気読みです。村上春樹文学の集大成、物語の全て(ミステリ、恋愛、ファンタジー、歴史、宗教、性等)が濃密に詰まっています。村上春樹版【『グレート・ギャッビー』&『不思議の国のアリス』】として読みました。今年こそノーベル文学書受賞を期待していますが、あらないでしょうか?本作で登場した絵画を実際に観てみたいので、『騎士団長殺し』の画集を企画・出版していただけないでしょうか?新潮社さんお願いします。

2017/04/05

遥かなる想い

第2部に入り、一気に 登場人物のすべてに 息吹が吹き込まれ、生き生きと物語は動き出す。 村上春樹が描く絵画的な風景は 読んでいて 本当に心地良い。 時折 何の前触れもなく 紛れ込む 雨田兄弟の戦時の追憶は苦く、 美少女 秋川まりえの言葉の切れ味は鋭く、 現実と夢の世界の冒険は まさに村上春樹 の世界.. 最後はひどく心 暖まるエンディングで 楽しい読書の時間だった。

2017/06/02

zero1

今見ている世界は本物?自分では何も選べない?免色の依頼でまりえの肖像画を描くことになった主人公。行方不明になるまりえ。不思議世界が展開する。南京事件にも言及。メタファーは「海辺のカフカ」そのまま。まりえの鋭さは「ダンス」につながる。イデアの騎士団長、「ねじまき鳥」のような穴と鈴、ペンギン、「フォレスターの男」など謎は残されたまま。しかしすべての謎が解けたらそれは小説でなく説明。下巻だけで500ページ超と長い。それでも読めてしまう。ウダウダ同じ所を巡っている感じも村上世界。彼の死後、AIで作品が書ける?

2019/06/19

抹茶モナカ

高等遊民のような優雅なアトリエでの日常と両義的な存在の免色さん、騎士団長と、少し静かな印象のあった第1部から、やはり、冥界巡りになって、そこからは一気読みでした。村上春樹さんが若かったら、高官暗殺未遂事件と南京大虐殺の話も深く描写していたのかなぁ、と。1人称でコンパクトに、静かなタッチで、それでも、ムラカミ・ワールドを描いたのは、筆力の向上もあるのだろう。ただ、何処か、読者を置き去りにして、カオスを残して環を閉じない作風が、ちょっと懐かしくて、それはそれで厭なんだけど、こう纏まっていると寂しくもある。

2017/03/12

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