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街とその不確かな壁

街とその不確かな壁

街とその不確かな壁

作家
村上春樹
出版社
新潮社
発売日
2023-04-13
ISBN
9784103534372
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「街とその不確かな壁」のおすすめレビュー

村上春樹『女のいない男たち』『国境の南、太陽の西』の青山を歩く。【村上主義者のための“巡礼の年”③】

 6年ぶりに出版された村上春樹の長編小説『街とその不確かな壁』。その舞台である街と図書館があるのは福島県Z**町とされており、その場所が実際にはどこなのか特定しようとする動きもあるようだ。久々に長編小説が出た今年を“巡礼の年”として、これまでの村上作品で描かれた場所を訪ねた。

村上主義者のための“巡礼の年” 第3回 青山 「木野」

『女のいない男たち』(村上春樹/文藝春秋)

村上作品における青山は往々にして“魔窟”である

「木野」(村上春樹/『女のいない男たち』所収/文藝春秋)

 村上春樹の作品には、東京都港区の“青山”が登場することが多い。小説やエッセイに出てくるエリアは、だいたい代々木駅から総武線で信濃町駅まで、そこから外苑東通りを南下して青山一丁目の交差点を通過、青山墓地の辺りまで行き、西麻布の交差点を右に折れて六本木通りを渋谷まで、そして山手線に乗ってスタート地点である代々木駅までを囲った、おおよそ一周9キロほどの場所だ。ここには村上が国分寺から越して再オープンしたジャズ・バー「Peter-Cat」があった千駄ヶ谷や、執筆のための仕事場、ファ…

2023/6/5

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村上春樹「チーズ・ケーキのような形をした僕の貧乏」の国分寺を歩く。【村上主義者のための“巡礼の年”②】

 6年ぶりに出版された村上春樹の長編小説『街とその不確かな壁』。その舞台である街と図書館があるのは福島県Z**町とされており、その場所が実際にはどこなのか特定しようとする動きもあるようだ。久々に長編小説が出た今年を“巡礼の年”として、これまでの村上作品で描かれた場所を訪ねた。

村上主義者のための“巡礼の年 第2回 国分寺 「チーズ・ケーキのような形をした僕の貧乏」

『カンガルー日和』(村上春樹/講談社)

国分寺の“底”が地中を掘るシャベルを持たせたのか?

「チーズ・ケーキのような形をした僕の貧乏」(村上春樹/『カンガルー日和』所収/講談社)

 村上春樹が作家となる前、ジャズ・バー「Peter-Cat」を営んでいたことはつとに知られたことだろう(ちなみに店名は飼っていた猫の名前から取ったそうだ)。最初に店を開いたのは国分寺駅近くの場所であり、その地での出来事を描いたのが、1983年に『トレフル』という雑誌に書かれた「チーズ・ケーキのような形をした僕の貧乏」だ。村上は本作を「短い小説(のようなもの)」と呼んでいるという。

 我々はその土地を「三角地帯」と呼…

2023/6/4

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街とその不確かな壁 / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

ヴェネツィア

村上春樹の集大成かとも思える作品。この小説の原型は、はるか1980年にまで遡る。「文學界」に掲載された中編小説がそれである。その躊躇いと再構築がようやくにして実を結んだのがこの作品。不確かなのは街を取り囲む壁だけではない。自己の存在もまた、そして私たちがこちら側の世界と信じている世界そのものもまた不確かなのである。650ページにおよぶ長編だが、この作品を読んでいる間、私たちもまた虚構の遠い世界の果てをさ迷う。そして、物語の最後に迎える終末において、私たちは圧倒的なまでの寂寥感をともにすることになる。

2023/10/08

ミカママ

壁のあちら側とこちら側、十六歳のままのきみと四十を過ぎたぼく、初恋と現在の静かな恋、ぼく自身とぼくの影…さまざまな対比と暗喩を軸に独特のパラレルワールドが、我々を翻弄する。「今自分はどこにいるんだろう」という気持ちにさせられて。明らかにダイナミズムの違う3つの部、個人的には第一部についてずっと読んでいきたかったが、第二部のぼくと子易さん、不思議な少年との静かな絡みも捨てがたい。そしてなによりクライマックスの第三部で、おおぉ、そうきたか、と気持ちをさらわれる。いつものように読者は置いてきぼりにされたまま。

2023/04/20

starbro

私はハルキストでも村上主義者でもありませんが、村上春樹の新作をコンスタントに読んでいます。本書は6年ぶりの長編、初恋パラレルワールド図書館ファンタジーでした。傑作とまでは言いませんが、今年のBEST20候補作です。どうせなら666頁が好かった。 このレビューは、The Beatles YellowSubmarineを聴きながら書きました♪ https://www.youtube.com/watch?v=m2uTFF_3MaA https://www.shinchosha.co.jp/special/hm/

2023/05/23

いっち

40年越しの仕事って、どうなんだろう。想像もつかない。1980年9月の『街と、その不確かな壁』に、村上さんは納得がいかなかった。長編にして書き直した『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』にも、結果的には満足しなかったようだ。今回の新作。当初は第一部だけだったらしい。半年寝かせ、第二部以降を書いたとのこと。第二部以降があって良かった。40年以上の作家経験や、歳を重ねたことが、作品に出ているように感じた。締切のない仕事だから、続編を書けたのだろう。作家の金銭的余裕が、良質な作品には不可欠だと思った。

2023/04/16

bunmei

本作は1980年に一度、文芸誌に掲載されたが、著者が納得のいかずに書籍化はされていない。その後『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を執筆。そして40年の時を経て、この2つの作品をベースに、『現実』と『非現実』を行き来する展開と、濃厚で緻密な言葉や文章に彩られた、村上文学の神髄とも言える長編小説として、再び陽の目を浴びた作品。題名の『不確かな壁』とは、現実世界において、居場所を見いだせない者が、安心して身を置ける、外界と隔絶した閉塞的な空間にする為の、心のバリアや内なる葛藤と感じた。

2023/04/30

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