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ひとりでカラカサさしてゆく

ひとりでカラカサさしてゆく

ひとりでカラカサさしてゆく

作家
江國香織
出版社
新潮社
発売日
2021-12-20
ISBN
9784103808114
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ジャンル

「ひとりでカラカサさしてゆく」のおすすめレビュー

一緒に命を絶った3人の高齢者、その死が残された者たちにもたらしたものとは? 江國香織の才気あふれる『ひとりでカラカサさしてゆく』

『ひとりでカラカサさしてゆく』(江國香織/新潮社)

 2020年に刊行された江國香織氏の小説『去年の雪』(KADOKAWA)は、彼女に対する読者のイメージを大きく覆す、先鋭的な企みと試みに満ちた野心作だった。様々な人物が次々に現れては消えるという構造を持つ同作には、なんと100人以上が登場する。しかも、冒頭で亡くなったはずの人物も、のちに死者として登場するのである。

 そして、『去年の雪』に続く『ひとりでカラカサさしてゆく』(新潮社)もまた、その構造からして特異で奇抜だ。物語は、ホテルのラウンジに集った、篠田完爾、重森勉、宮下知佐子という高齢者3人の会話から始まる。1950年代の末に美術系の出版社で知り合った3人は、会社が潰れたあとも定期的に集い、親密な友達付き合いを続けていた。

 その3人が猟銃自殺を遂げる。言うなれば心中なのだが、自殺の理由は不明。3人の係累や知人は彼らの自殺に驚き、戸惑いを隠せない。既に80歳を超えている3人がなぜ、このタイミングで自死を選んだのか――。

 設定を鑑みると、これからミステリが始まると予測する人もいるだろう。確かに、3…

2022/3/21

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ひとりでカラカサさしてゆく / 感想・レビュー

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starbro

江國 香織は、新作中心に読んでいる作家です。 高齢化が進むと、こういう終活は増えてくるかも知れません。しかし小説の中身とタイトルがマッチしないような気がするのは私だけでしょうか? https://www.shinchosha.co.jp/book/380811/

2022/01/19

旅するランナー

80代の男女3人がホテルの一室で自殺する。遺された者たちの様々な反応を描きながら、生と死の境の曖昧さを感じさせるような、生者よりも死者の方を身近に感じる不思議さ。江國さんの高貴な文体と言葉選び、好奇に満ちた話題の中に、読者は人間の可笑しさを垣間見ることになる。

2022/02/16

のぶ

前作「去年の雪」では登場人物が猛烈に多く混乱したが、本作は限られた人物のドラマを堪能する事ができた。冒頭は大晦日の夜。ホテルに集まった八十歳過ぎの三人の男女。彼らは酒を飲んで共に過ごした過去を懐かしみ、そして一緒に命を絶った。そこから、残された彼らの親族や友人の日常は続いていくが、その出来事からそれまで気が付かなかった事や、目を向けなかったことに気づいたりして、些細だが新たな挑戦をしたり、わずかに変化した日常が進んでいく。群像劇ともとれる物語だが、それぞれの人物はしっかり書き込まれていた。

2022/01/08

『デューク』犬の短編がとてもすきです。夜中に消したはずのテレビで落語を見ていた犬の話がとてもすきです。「今までずっと、僕は楽しかったよ」「僕もとても、愛していたよ」老いたときにきっと犬は言ってくれると信じます。

2023/01/02

ケンイチミズバ

祖父母の死にこれ程の感慨をもつことはないな。そもそも自分自身がそこそこの年齢で直面したことだし。ストーリーを膨らませるためにセンセーショナルな死を設定したものの、それぞれの家族の憐憫がくどくどしい。ディテールのこだわりと理屈や蘊蓄も多い。それ以上に登場人物が多過ぎてどの人の親族?まあいいや。相変わらず人物像に凝りすぎた感があって、作家や医師や文化人やデンマークに留学しているくらいのそこそこの階層の人ばかりで鼻につくが、そこは江國香織的で分かってはいるものの、そして嫌いではない。自分の死に方も少し考えたし。

2021/12/27

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