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水晶内制度

水晶内制度

水晶内制度

作家
笙野頼子
出版社
新潮社
発売日
2003-07-01
ISBN
9784103976042
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水晶内制度 / 感想・レビュー

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tomo*tin

激しい憎悪と憤怒でコーティングされた水晶は、硬い煌めきとその硬度ゆえの脆さを内包し、崇高で純度の高い物語を綴る。性差別、制度の狂気、「生きる」という魂の戦闘。私の脳内妄想は語り手に導かれるままに暴走し、眼前で繰り広げられる神話の解体と再構築に呑み込まれ、あらゆる存在から隔絶された魂、あるいは隔絶されたいと望む魂、もしかしたら融合したいと願っているのかもしれない魂、の行く末を見守る。見守り、見届け、恐れ慄く。この衝撃は久々だ。私は笙野さんの言葉に物語に惚れました。著作すべてを読破したいと思う。

2009/05/23

あ げ こ

我が恐ろしき、愛おしきウラミズモ。自分にとっても大層居心地がいい、大層都合がいい。自分の今が、この生き辛さごと壊されて行く。痛快だ。どうしたって痛快だ。自分は確かに、痛快さを感じている。けれど当然、それだけでは全然ない。それだけであるはずがない。快いだけであるはずがない。そう言う事ではない。笙野頼子は超越している。ずっと恐ろしいし、後ろ暗い。不信感は終始変わる事なく付きまとう。いやすくてもただ喜んでいる訳にはいかない。ただ溺れる訳にはいかない。かつての痛みや抑圧が癒えようとも、疑念や恐れは消えようがない。

2018/07/22

空箱零士

★★★ 社会は黙殺の対象を生み出す。それが在るべき規範の遵守を要求する以上は必然だろう。うわーっ。問題はその規範がなにに依って生み出されるかである。男権を「規範」とした日本への反発として創りだされた女尊男卑の国家・ウラミズモ。日本では「見えない存在」として黙殺された女性作家はウラミズモの国民作家として神話を執筆することとなる。うわーっ。基本的にはウラミズモの生態と彼女の自意識を描いた小説だ。「そういう国家」としては合理的とすら言えるシステムの中で一つだけ異端と言えるシステムがある。すなわち、水晶夢である。

2014/04/22

kenitirokikuti

図書館にて。2003年刊行。電子化ありだが増刷はなく、2020年にエトセトラブックスから復刊した。2020年版あとがき(いつものようにエッセイ成分が濃いやつ)を読んでの感想である。稲葉真弓は最晩年のエッセイにて別名義「くりぃむレモン」ノベライズ仕事について若い日の眠剤遊びのような趣きで回想してたよう覚えてるが、笙野頼子は軽い性別違和あるもののヘテロであるし、重病もあって未通と言う(性交以前に人と対面する段階で消耗)。わたしも50近いけど、童貞だしドロップアウト者なので、笙野氏と趣味は合わないが、理解は及ぶ

2023/05/25

rinakko

再読。えいやっ…と身構えて読み返したら、初読時よりも余程得心のいく読み心地だった。きつい内容ではあるが、その辛さは当たり前のように日常の中にある悔しさや怒りと直結しているので、そういう意味では淡々と頁を繰っていた。世界の陰画としてのウラミズモは、女が人間になろうとすれば女尊男卑がてっとりばやいという理屈の元に成った偽フェミニズムの国だ(高邁な精神などないよ単なるあべこべだから)。その設定と言い、火枝無性による日本神話書きかえ(国滅び神話と出雲神話の結び付け!)と言い、隙なくつくり込まれていて頗る面白かった

2019/10/25

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