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百年の散歩

百年の散歩

百年の散歩

作家
多和田葉子
出版社
新潮社
発売日
2017-03-30
ISBN
9784104361052
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百年の散歩 / 感想・レビュー

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KAZOO

多和田さんの比較的最近の作品です。ベルリンの幾つかのとおりを題名にして、そこに集う人々などや書き手の想いを綴られたエッセイのような連作短篇なのでしょう。言葉遊びがあったりして読んでいても本当にこの作家はうまく言葉を紡いでいるという気がします。多和田さんが日本人作家では一番ノーベル文学賞に近い気がします。私はむかしベルリンが分断されていた頃に何度か行ったことがありこの本を読んで再度訪ねてみたくなりました。

2017/06/16

nico🐬波待ち中

ベルリンのあちこちの通りで「あの人」を待つ。けれど待ち人はなかなか来ない。来ない「あの人」を待ちながら、のんびりとそぞろ歩きしながらの連作短編集。目に止まった景色や人々の観察、街の歴史に思いを馳せ、百年前にトリップして空想に浸ったり。言葉遊びのような文章が楽しい。日本語、ドイツ語等多様な言語が踊り出し、韻を踏んだような言葉遊びにニヤリとなる。私はベルリンを訪れたことはないけれど、一緒に散歩した気分になれた。百年前に建てられた建物等をゆったり見ながら、百年前に思いを馳せながらの散歩、なんて贅沢なことだろう。

2018/09/24

どんぐり

「カント通り」「カール・マルクス通り」「マルティン・ルター通り」など、ベルリンにある通り。多和田さんの10章からなる通りをめぐる散歩と思索の跡を追う読書体験。しばしば出てくる「あの人」とはいったいだれなのか。――いつだっか、「トゥホルスキー通り」という名をわたしが何気なく口にしたとき、あの人の顔が一瞬輝いた。何かを思い出したようだった。ところが記憶を辿り始めるまえに、「それほど重要ではない」という名前の箒がさっと脳床をはらって、記憶のかけらをチリトリにのせて鳥のように運び去ってしまった。――読者も、いつの

2017/12/19

なゆ

ベルリンの街角。いろんな人の名前を刻んだ通りで、わたしはあの人を待っている。待ちながらぶらぶらと気の向くままに歩き、目にとまる人や物に想いが絡まり、思考もうろうろと散歩を始めてしまう。言葉あそびもたっぷりで自由気ままなようでいて、きな臭い歴史や予感もチラチラ。とても不思議な空間、奇妙な散策なんだけど、なぜか無性に気になる文章たち。イメージ的には、ベルリンをずんずん闊歩する多和田さんの後を、必死についていこうとするも結局迷子になってしまったような。でもついていきたい。ああ、多和田さんには敵わない。

2017/04/25

aoringo

ベルリンの街をあてもなく散策する主人公の「わたし」。他の方の感想にもあるように言葉遊びがふんだんに盛り込まれている。しかし決して読みやすいとは言えない。空想というより病的な妄想に取り憑かれている孤独な一人遊びで、一冊を通して夢の中の出来事を語られている感じを受けた。混沌としたその中で「あの人」の存在だけがくっきりと形作られている。最後まで読み切ったけど、ちょっと疲れてしまった。読む人を選ぶかもしれません。

2019/03/11

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