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その姿の消し方

その姿の消し方

その姿の消し方

作家
堀江敏幸
出版社
新潮社
発売日
2016-01-29
ISBN
9784104471058
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その姿の消し方 / 感想・レビュー

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KAZOO

この作品は小説なのですが、最初は堀江さんが出会った実際のはなしだと思って読んでいました。古い絵葉書に書いてある詩のような文章からそれにつながりさらに新しい絵葉書が出てきて、ということで実際の場所などに行って生存者に話などを聞いて、というあまり起伏のないはなしですが私は好きです。堀江さんの小説やエッセイなどを読んでいて最近は福永武彦を思い出してしまいます。

2018/01/15

かりさ

言葉とは単にぽつんと意味を成すだけのものではなく、落とされた記憶と共にあり続け、時に静かに漂い、ふいに熱く強く揺さぶりどうしようもなく惹かれてしまう。フランスに留学時代、古物市で出会った一枚の絵葉書。その裏に書かれたぴったり十行に収まった詩篇のような言葉の塊。ブルーブラックのインクで書かれたその詩のようなものに惹かれてゆくことから物語は語られてゆきます。静かに静かに波紋を広げ、人生の心の軌跡を辿る旅。言葉とは文学とは、その人の記憶に人生に寄り添い続けてくれる。静謐で美しい文章、装丁全てが愛おしい作品。

2016/04/09

コットン

フランスの観光地でも何でもない町の古い絵はがきに触発された日本人の私がその場所を尋ねる所から物語が始まる。絵はがきの裏に几帳面だが抽象度の高いぴったり十行でおさまる詩の謎や、これを書いた彼にまつわる人々との交流、時の流れなどを感じさせてくれながらも、出会いの面白さを説いているようにも思える。いずれにしても、ゆったりと流れる時間の中で上質のフランス映画を見ている気分にさせてくれる。ブックデザインもそんな時代を感じさせない落ち着いた感じで良い。

2016/10/29

aika

ことばが、こころをつなぐ。フランスにて「私」がたまたま手にした、一枚の絵葉書に込められた、幻の詩人アンドレの思い。たった一編の詩を探求する旅路で出会う人びと。社会的背景は様々でも、皆が、それぞれの人生を歩んでいる。人種も、時空も超えて結ばれた、現在の私と過去のアンドレ。そして、過去であるアンドレが残した詩が紡いだ、今を、これからを生きる私と人びとの邂逅。この物語を読み終えて、今、自分の心のそばにいる人に、ありったけの思いを、自分の言葉で伝えよう。言葉は、そこに託し託された思いは永遠なのだ。そう思いました。

2016/11/05

周到&執拗

暗号小説が退屈になりがちなのは、暗号自体の問題というより、その扱い方がクイズ的になるせいだろう。その証拠に、謎の暗号の連続を殺人予告と絡め、解読後同じ暗号で逆攻撃を仕掛ける例のホームズ譚などは、戦記のような迫力がある。フランスの古物市で見つけた絵ハガキの詩文の謎を追う本書は、ホームズ譚とはまた違う意味で暗号を逆用する文学的な冒険だ。語り手を思うまま引きずり回す暗号の物語は、暗号無用の数編をはさみ、暗号を思うまま利用する語り手の物語へ変貌する。はなはだ技巧的な最終話には、優しさとしたたかさがみなぎっている。

2016/03/30

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