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忘れられたワルツ

忘れられたワルツ

忘れられたワルツ

作家
絲山秋子
出版社
新潮社
発売日
2013-04-26
ISBN
9784104669066
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忘れられたワルツ / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

大震災を機に世界との間に生じた断層、あるいはズレといった異和を描いた小説が7話。冒頭からの2話には震災の記憶も濃厚だ。第3話「葬式とオーロラ」あたりから、次第に世界が変容し始め、それは次の「ニイタカヤマノボレ」で一気に加速する。シュールな趣きを持つ「NR」は、それが最も顕著で、したがって分かり易い。ところが、次の表題作「忘れられたワルツ」で、読者は混迷に投げ出されることになる(これが篇中では最難解)。そうした断層は巻末の「神と増田喜十郎」に持ち越されるが、その一方で、これで予定調和という気もするのである。

2015/04/12

めろんラブ 

もし絲山氏にお会いする好機(サイン会など)があっても、残念ながら回避するしかない。それは、好きすぎるが故の妙な挙動で気味悪がられ、早々につまみ出される事うけあいだからである。アイドルの握手会などに出没する”やらかしてる”ファンを見るにつけ、あれは我が姿なのだと肝に銘じるようにしている。さて、こちらは待ちに待った絲山氏の最新刊。軽々と期待を超えるプロの技を繰り出すのは毎度の事ながら、作品毎に新たなアプローチに挑戦する姿にはザ・作家の矜持を感じる。お会いできる日は永遠に来ない。そんな確信を持って、本を閉じた。

2013/07/09

なゆ

それとなく震災後をにおわせる短編集。高まる危機意識や、受け入れられない人、目を逸らす人、何かが変わったと感じる人、そのとき神は…。表題作は、なんか不思議な父娘の会話からハッと気づいた時の衝撃。「ニイタカヤマノボレ」も、なんか怖い暗示的。「NR」の不思議な迷子感のなかでの津田と湯浅のヘンな会話やつぶやきとトカトントンはフフッと笑えてツボ。でも、一番印象的で好きだったのは「神と増田喜十郎」。女装が唯一の趣味の増田と神がすれ違う。ちょっと気まぐれにも見える神、その手の中に全てはあるのだということに、ヒヤリ。

2014/06/10

nico🐬波待ち中

震災を絡めた7話が収められた短編集。「恋愛とはすなわち雑用である」の一文で始まる『恋愛雑用論』。雑用でしかないけれど決して不要ではないらしい。日下部さんと金子くんの掛け合いが笑えた。また「離婚したから遊びに来ませんか」で始まる『強震モニタ走馬燈』も良かった。新年早々この一行の年賀状を寄越した女友達は、暇さえあれば強震モニタを見ているという変わり者。けれど悩みだろうが悪口だろうが、何を言っても否定しない。こんな友達いいな。今日も一人でモニタ監視をしているであろう彼女に、是非とも凹んだ時に逢ってみたいものだ。

2017/10/06

あつひめ

過去と現在がほんのわずかな紙一枚くらい違いにありながらもう見ることができない喪失感。大事な物を失う怖さ。物語はまだまだ続くように終わってる。この中に出てくる人は、その続きを生きている…なぜかそう思わせる筆運び。二人なら一人より寂しくない…別のものが動き出すような、もう私たちには見えないものがそこにはあるような…。都会ではない、地方ならではの人との距離感を感じる。

2014/12/21

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