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あの川のほとりで 下

あの川のほとりで 下

あの川のほとりで 下

作家
ジョン・アーヴィング
John Irving
小竹 由美子
出版社
新潮社
発売日
2011-12-21
ISBN
9784105191146
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あの川のほとりで 下 / 感想・レビュー

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NAO

アーヴィングの師であるカート・ヴォネガットも出てくる。作品の中のカートの言葉は、アーヴィング自身が実際に言われた言葉なのだという。また、同時期にカートに師事していた作家仲間のレイモンド・カーヴァーも出てくる。さらには、登場人物がテレビで9.11の事故の映像を見るとシーンもある。今回の作品は、いつも以上に政治的な言及が多い。相変わらず猥雑で、ごちゃごちゃした話の組み立てで暴力的な描写も多いのに、優しさに満ち溢れている。

2022/04/14

マリカ

なんて深くて、濃密な小説だろう。人は「事故の起こりがちな世界」で毎日を生きている。運命のいたずらによる、予期せぬすばらしい出会いと、身を打ちひしがれるほどの喪失とを繰り返しながら。アーヴィングはそんな世界で生きることの辛く悲しい一面に読者をひきつけることで、人生の希望に満ち溢れた、幸せというべき一面を強調してくれている。しばらくはこの力強い物語の豊かな余韻に浸っていたい。

2012/04/10

tom

アービングの書く物語はいいなあと思う。ときどき退屈ではあるものの、タラタラと読み進めていても、終わりに近づくと集中力が増してきて、ああ終わってしまったと残念に思ったところで読了という感じがいつもある。この物語の主人公は、母を失い、子どもを失い、父も失う。心の父も失う。悲劇が続くのだけど、主人公の中で彼らは再構成されて、今もそこにいるという物語。最後の場面では、空から素っ裸で降りてきた天使(この天使は、養豚場の糞尿のなかに着地した)と再会して、いっしょに風呂に入る。こういうシーン、アービングだなあと思う。

2022/06/25

りつこ

物語の最初から不吉な感じが漂っていてそれは今を生きる私たちにはとても馴染み深い。暴力、喪失は避けられないのだが、しかし失ってばかりではなく同じくらい手にしているものもあって、その手応えも間違いなく残っている。悲しいのにおかしくて、泣きながら笑っている。グロテスクなのに美しくて、それとははっきりわからないけど、間違いなくここには愛がある。あーやっぱりアーヴィングは最高だ。

2012/02/21

猫のゆり

ゆったりとした川の流れを楽しんでいたと思うと、時折急流があったりとんでもない滝があったりして、かなり波乱に満ちた川下りだった。一気に読んでしまうのがもったいないんだけど、そうせずにはいられなかった。最後のページに行き着いた時、この分量を読んで来たからこそ味わえる至福の瞬間が訪れる。あー、私たちはやはり、フィクションがなくては生きていけないのだ、生きて、この小説を読めてよかったと思える。人生辛いこと苦しいことも多いけど、ごくたまに、本当に天使が降りてくることだってあるんだと思わせてくれる。よかった。

2012/01/31

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