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シェル・コレクター (新潮クレスト・ブックス)

シェル・コレクター (新潮クレスト・ブックス)

シェル・コレクター (新潮クレスト・ブックス)

作家
アンソニー・ドーア
Anthony Doerr
岩本 正恵
出版社
新潮社
発売日
2003-06-01
ISBN
9784105900359
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シェル・コレクター (新潮クレスト・ブックス) / 感想・レビュー

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ケイ

短編集。表題作の「シェルコレクター」が一番心に残る。人の世は移ろい、人の心も移ろう。愛していた身近な人は帰って来ず、大切に思っていても離れているほど関係性はかわる。大切にしていたものを、他の人がどうして同じように大切に扱ってくれないのか、悲しくなる。珊瑚なんて、貝殻なんて、すぐに壊れてしまうのに。大切している物を壊すモーターボートの音も、自分を助けに来る時には、助けに来るやさしい人が乗っている時には、その響きは希望となり暖かい気持ちを生みだす。

2018/12/09

nobi

足裏で貝殻を見つけた遠浅の海の記憶が蘇る。視覚を失った少年が魅了された貝の外骨格の多様性と謎めいた進化の原理、に私もまた魅了される(シェル・コレクター)。リベリア内戦の痛ましい記憶に苛まれ償いもままならず自暴自棄となっていたジョゼフ。聾唖の少女が彼に光を齎す、その一見何でもない場面に心震えてしまう(世話係)。ドーアは身体感覚を通して自然とあるいは人と向き合う世界を繰り広げる。不具なのは現代人の方ではないかと静かに問いかけるように。ただ反文明を標榜するのでもない。プロット多彩で現代を踏まえた物語が展開する。

2018/04/30

雪うさぎ

美と喪失は同じものであり、それが世界を秩序づける。冬眠する動物の脈動、疾走する娘の息づかい、地中に埋められたクジラの心臓。それらはやがて大地と同化して、森の歌となっていく。喪失することによって、新たな命が芽吹き、新しい可能性が開かれる。毒と薬、愛と失望、出会いと別れ、自然と文明。対比するかに見えるものも、実は細い線で隔てられているだけ。その線は儚く、ときには存在しない。作家は世界を巡り、写真家のような観察眼で、自然とその土地に住む人や生き物の営みを静謐な文章で写し撮る。命の鼓動が鮮明に伝わってきた。

2016/01/21

優希

美しい短編集でした。この感じが好きだと思わせるようにスッと入りこめるような世界観が広がっていました。美しい自然と、孤独でありながら希望を持つ人々が登場しているからこそ物語にきらめきが感じられるのだと思います。生き物本来の命を静かにあたたかく見つめる眼差しが神秘的で、魂が浄化されるようでした。

2015/12/27

ケンイチミズバ

私は貝になりたいという小説もありました。殻に守られ、平安と孤独から脱け出そうとしない、人生を捨てた貝類学者は盲目でもあり、まさに貝そのものでした。研究していたイモ貝の猛毒で旅行者のマラリアが治癒し、島の有力者の娘の命も救った二度の奇蹟が逸話となります。マスコミや不治の病で藁にもすがろうとする人々が彼のもとに殺到し彼はひどく混乱します。ラスト近くの行動は自殺しようとしたのか、あいまいだが繊細で感覚的な表現が美しい。死者と大切な人を失くした人を繋ぐ能力を求め多くの遺族がある女性を訪ねてくる物語もよかった。

2016/08/15

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