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戦時の音楽 (Shinchosha CREST BOOKS)

戦時の音楽 (Shinchosha CREST BOOKS)

戦時の音楽 (Shinchosha CREST BOOKS)

作家
レベッカ マカーイ
藤井光
出版社
新潮社
発売日
2018-06-29
ISBN
9784105901486
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戦時の音楽 (Shinchosha CREST BOOKS) / 感想・レビュー

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ケイ

ここ日本では、お盆やお彼岸にはあちらの世界にいる人に想いを馳せるが、この短編集では、亡くなった人たちは常にそこかしこにいて、私たちと交信する。共に存在する。私たちは彼らとともに生きる。それはさりげなく日常に存在しているようだが、死者に巻き込まれるのはやはり容易なことではなく、心がどこか疲弊していく。優しい言葉の中にはうらみはほとんど無いのに、彼らの嘆きを共有してしまう。それだからか、感情を混ぜる余地のない最初の投稿短篇が一番好き。何度読んでも、ひきずられることなく、残酷さに身を委ねられる。

2018/09/28

chantal(シャンタール)

戦争と音楽をテーマに描かれる短編集。間奏にはハンガリー動乱からアメリカへ逃れて来た父の元に生まれた、作者の家族史が奏でられる。バッハがタイムスリップ?と言うユーモラスなお話や映画「フィラデルフィア」を思わせる物語も。そして全編に渡り、どこかしらにホロコーストの残り香が漂う。あの歴史はヨーロッパやアメリカの人々にとって、どうにもならない歴史の足枷なのだろうか。最終話「惜しまれつつ世を去った人々の博物館」はまさに美しい交響曲の仕上げの最終楽章を堪能した後のような、美しく、悲しい余韻を残した。

2021/02/28

キムチ27

読んだ時間の軽薄さを猛省。何気に・・クレスト、藤井氏訳という事と装丁の幻惑的魅力の虜になり手に取った。17の短編は重奏音と共に世界各地の時空間へ引きずり込み、そこを泳ぎ切れぬ自分の語彙力と脳内世界の狭量を痛感させられる。どれが魅力・・なんて言えない・・読む片端から次なる世界を泳ぎ出すから。装丁は「ブリーフケース」の切り取られた世界。ブルー、重力に反する空気感とリンゴの皮~下に落ちるのか、上に浮揚するのか・・他を語る字数が無いので無駄口叩かず、今年最高の読書だったと一人ごち。不条理世界の魅力から離れられない

2018/12/24

アン

『すべての見えない光』の訳者である藤井氏による翻訳本なので手に取ってみました。戦争と音楽や絵画等が織り込まれ、様々な芸術家が登場する短篇集。薬指を失ったバイオリニスト、物理学教授になりすますシェフ、庭の十字架に悩むチェロ奏者…。この作品の「戦時」とは単に戦争を示すだけではなく、差別や偏見、強迫観念といった影響により、心の葛藤に苦しみながら生きていく時間の意味もあるように思います。だからこそ、芸術の存在意義があるのでしょう。多彩な作品で、著者の家族に関する回想録も挟まれています。

2019/02/20

けろりん

タイトルは、様々な色合い、手触り、雰囲気を持つ作品群を時と闘いと音楽をモチーフにして織り交ぜたコラージュを引き締める額縁となる。もがき苦しみながら産まれ出でる人の命は、生そのものが闘い。鼓動、体内を巡る血潮、手で足で取る拍子、呼吸。人の身体はそれ自体が楽器。そう捉えてみれば、人生は戦時の音楽だ。匿名の人々の地、アメリカで撮られた一枚の写真。少女の6歳の誕生日のスナップを座標に、時は自在に過去へ未来へと移り、民族の苦難、一族の歴史、一つの国の自立の終焉の物語を紡ぎ出す。魔術的な語りの力を持つ作家に出会えた。

2018/11/24

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