愛と呪い 1 (BUNCH COMICS)
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「愛と呪い 1 (BUNCH COMICS)」のおすすめレビュー
「誰も私を助けてくれないのなら、全部殺してほしい」閉塞感に満ちた90年代を生きた、ひとりの少女の残酷な青春物語『愛と呪い』
『愛と呪い』1巻(ふみふみこ/新潮社)
祈れば必ず願いは叶う。そして幸せになれる――。ぼくは幼少期、宗教にのめり込んでいた祖母から繰り返しそのように諭され、育てられた。けれど、常に心の片隅にあったのは、祈りなんかで幸せになれるわけがないという冷めた想いだった。大人になった今も、その気持ちは変わっていない。しかし、当時の祖母の言葉は、いまだに“呪い”のように心と体に染み付いていて剥がれない。だからこそ、『愛と呪い』1巻(ふみふみこ/新潮社)を読んだとき、「ここに仲間がいる」と感じた。同時に、胸が裂けるような痛みを覚えた。
本作は、セクシュアルマイノリティの少年たちを描いた『ぼくらのへんたい』(徳間書店)で知られるふみふみこさんの新作であり、“半自伝的クロニクル”である。
主人公である愛子を取り巻く状況は、控えめにいっても“異常”だ。物心ついた頃から繰り返される、父親による性的虐待。それを見て、ただ笑うだけの母親。そして、両親を含め、家族はとある宗教にすがりついており、愛子は“教祖”が設立した学校へ通っている。言い換えるならば、絶望的な状況。幸せな…
2018/7/14
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父親からの性的虐待、母親は見て見ぬふり… 毒親が登場する漫画まとめ
最近、すっかり名称が浸透してきた「毒親」。親は一般的に子どもと接する時間が長いため、その存在は、子どもの人格形成や人生に大きな影響を及ぼし得るだろう。
本稿では、そんな毒親が出てくる漫画を5つ選んだ。それぞれに違ったタイプの毒親だが、みなさんがイメージするのはどの毒親に近いだろうか。
このまとめ記事の目次 ・きみが心に棲みついたS ・血の轍 ・愛と呪い ・岡崎に捧ぐ ・凪のお暇
■異常に自己評価の低いネガティブ女子を救うのは…?
『きみが心に棲みついたS』(天堂きりん/祥伝社)
はじめにご紹介するのは、『きみが心に棲みついたS』(天堂きりん/祥伝社)。主人公の小川今日子は、異常に自己評価の低いネガティブ女子。挙動不審ですぐにパニックになるため、ついたあだ名は「キョドコ」。下着メーカーで働く今日子は大学時代からの想い人・星名に職場で再会する。かつて星名は今日子に「そのままでいい」と言ってくれたが、彼は今日子を支配し、ひどく傷つける男でもあった。
今日子の母親は、妹とは仲良く話すなど、普通の母親として接しているが、姉の今日子に対しては態度が一変。「あん…
2018/10/21
全文を読む「すべてがぶっ壊れればいいのに」とにかく生きづらかった10代――『愛と呪い』ふみふみこインタビュー【後編】
『ぼくらのへんたい』(徳間書店)で、女装する男の子たちの内面を鮮やかに描き切ったマンガ家・ふみふみこさん。このたび上梓した新作『愛と呪い』(新潮社)では、「宗教」をテーマに、孤独に押しつぶされそうなひとりの少女の闘いを描いている。
父親からの性的虐待、それを見て笑う家族たち、そんな異常な状況を変えてはくれない宗教というもの……。信仰心は決して救いになどならず、呪いを植え付けるだけ。そこにあるのはふみふみこさんの痛烈なメッセージだ。本作はふみふみこさんの「半自伝的クロニクル」とされている。自身の半生を赤裸々に描く。その覚悟は相当なものだっただろう。
そして、本作の主人公・愛子は、やがて「すべてを破壊してほしい」と実在するひとりの犯罪者への想いを募らせていく。その犯罪者の名前は、「酒鬼薔薇聖斗」。少年Aで知られる人物だ。
ふみふみこさんは、なぜ本作で酒鬼薔薇聖斗に言及しているのか。その意図とはなにか。インタビュー後編では、その想いの深淵に迫っていく。
■「10代の頃は、すべてがぶっ壊れればいいのにって思っていました」 SNSの台頭により、簡単に他者と…
2018/8/26
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愛と呪い 1 (BUNCH COMICS) / 感想・レビュー
トラシショウ。
1990年代。地方都市で新興宗教にはまる家庭に育ち、宗教色の濃い学校へと通う中学生・愛子。物心つく前から日常的に父親による性的虐待に晒され、周りのクラスメイトや家族程には信仰に救いを見いだせない彼女はある日、震災で弟を失いリアリストになった松本さんと出会う。周りに左右されぬ強さと凛々しさに感化された愛子は、合唱祭に訪れる教祖殺害に燃える彼女を応援するが、その直前に神戸で「酒鬼薔薇聖斗」を名乗る恐るべき殺人事件が起きた事が愛子と、そして松本さんの運命を狂わせていく。半自伝的な作品らしい(以下コメ欄に余談)。
2018/07/10
ぐうぐう
阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、日本を揺るがす出来事が起こっているとき、少女・愛子は父からの性的虐待を受けていた。家族は宗教に心酔し、父の行為を視界に入れながらも、それが何を意味しているかに想いが至らない。宗教系の学校も愛子にとっては救いにはならない。ただ一人、宗教の言葉の薄っぺらさに気付き、世界を憎む同級生・松本に、愛子はシンパシーを覚える。ククリナイフを隠し持ち、教祖と教祖を信じる者達の殺戮を計画する松本に、愛子は救いを覚えるのだ。けれど、計画が実行される直前、酒鬼薔薇事件が起こる。(つづく)
2018/07/07
松島
いつか救いはあるのですか?
2018/10/06
Merino
淡い絵柄ながらも結構強烈だった。
2018/10/03
gawa
強烈。宗教とか虐待とかでわかりやすい不幸を描かれるのは嫌いだが、作者の半自伝的作品ということもあり、安くはならない。主人公が世界に絶望し、世紀の殺人鬼にすら共感を覚えてしまう過程を痛切に描き、こちらの感情も支配されてゆく。父親に性的虐待を受け、それを見ている母親がバカ笑いしている世界で、主人公はいかにして大人になるのか?
2018/07/15
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