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52ヘルツのクジラたち (単行本)

52ヘルツのクジラたち (単行本)

52ヘルツのクジラたち (単行本)

作家
町田そのこ
出版社
中央公論新社
発売日
2020-04-18
ISBN
9784120052989
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「52ヘルツのクジラたち (単行本)」のおすすめレビュー

杉咲花・志尊淳出演映画『52ヘルツのクジラたち』が現代人の心に響く理由は? 「誰にも声が届かない…」絶望と孤独を静かに癒す救いの物語

(C)2024「52ヘルツのクジラたち」製作委員会

 その声はあなたに届く――そんな短くも力強いメッセージと、俳優の杉咲花さんと志尊淳さん、そして一人の少年(桑名桃李さん)が不思議な距離感で寄り添うポスターが印象的な映画「52ヘルツのクジラたち」。杉咲さんと志尊さんだけでなく、宮沢氷魚さん、小野花梨さんといった旬の若手実力派俳優が集結し、『八日目の蟬』など人間の光と影を絶妙に描き出すと定評のある成島出さんが監督をつとめた本作は話題性も大。丁寧に描き出される静かな救いの物語は多くの人の魂を大きく揺さぶり、「泣ける」と現在大ヒット上映中だ。

 原作は町田そのこさんの同名小説『52ヘルツのクジラたち』(中公文庫/中央公論新社)。2021年に本屋大賞を受賞した作品なので、すでに読まれた方も多いかもしれない。昨年5月には文庫化され、映画上映中の現在は映画のポスター写真を利用したダブルカバー付きで店頭に並んでいる(ちなみに文庫のオリジナルカバーの裏には文庫特典のショートストーリー「ケンタの憂い」が収録されている)。すでに映画を観たという方、これから観ようとする…

2024/3/23

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【2021年本屋大賞授賞式レポート】「孤独な魂の叫びを聞き取り寄り添う、寂しくも美しい物語」『52ヘルツのクジラたち』が大賞に

 2021年4月14日、全国書店員たちが“いちばん売りたい本”を選ぶ「2021年本屋大賞」の授賞式が行われた。同賞は新刊書店に勤務するすべての書店員(アルバイト、パートを含む)が投票資格を有し、その投票結果のみで大賞が決定する文学賞。1次投票には全国の438書店より書店員546人、2次投票では305書店、書店員355人もの投票があり、町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)が大賞を受賞した。

大賞受賞作『52ヘルツのクジラたち』——生きづらさを抱える人々の物語

 本屋大賞を受賞した『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)は、自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、親からの虐待によって言葉を発せなくなった少年の交流を描いた物語。タイトルになっている「52ヘルツのクジラ」とは、仲間が聞き取れない高い周波数で鳴くクジラのことだ。誰にも聞こえない魂の叫び。児童虐待や毒親、性的マイノリティなど、現代社会の問題を中心に据えながら、生きづらさを抱える人々が絆を結んでいく姿が丁寧に描き出されていく。

 本書に対して書店員からはたくさんの推薦…

2021/4/16

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「この本が、読書体験の入り口になれば」2021年本屋大賞受賞『52ヘルツのクジラたち』町田そのこさんに聞く作品への思いと創作のこと【受賞後インタビュー】

 全国の書店員がいちばん売りたい本を選ぶ「2021年本屋大賞」が、4月14日(水)に決定した。全国書店員の投票を集計した結果、ノミネートされた上位10作品の中から見事大賞を受賞したのは、『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ/中央公論新社)だ。児童虐待などの重く難しいテーマを扱いつつも、生きようとする人間の力強さと、その絆に希望を見出せる本書について、著者の町田そのこさんにお話をうかがった。(取材・文=三田ゆき 写真=山口宏之)

ノミネートされただけで奇跡だと思っていた

──「2021年本屋大賞」受賞、おめでとうございます。

町田そのこさん(以下、町田) ありがとうございます。やっと、実感が湧いてきました。

──受賞の第一報を受け取ったときは、どんなお気持ちでしたか?

町田 外出していて、ちょうど駐車場に車を止めたときに、担当さんから電話がかかってきたんですよ。自分はノミネートされただけで奇跡だと思っていたので、「まさか」という気持ちでした。「大賞です」と聞いたときも、最初は信じられなくて……言葉の意味を理解した瞬間、涙が「ぴゅっ」て、水平に出ましたね…

2021/4/16

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2021年本屋大賞受賞『52ヘルツのクジラたち』町田そのこさんと、『明け方の若者たち』が映画化決定したカツセマサヒコさんによる注目作家対談!

2021年本屋大賞を受賞した『52ヘルツのクジラたち』町田そのこさんと、北村匠海主演で映画化が決定した『明け方の若者たち』カツセマサヒコさんの対談記事をお届け。おたがいの著書を読んでの感想から小説の書き方まで、語りあっていただきました。 《以下の記事は(2020年12月)の再配信記事です。掲載している情報は2020年12月時点のものとなります》

町田そのこさん(左)とカツセマサヒコさん(右)

 毒親や虐待など、歪んだ愛情からの離脱と再起を描き、多くの人から支持される『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ/中央公論新社)。2016年の「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞以来、コンスタントに小説を書き続けてきた町田そのこさんの1冊を、先日「今年一番胸に刺さった」本として挙げた人がいる。『明け方の若者たち』(カツセマサヒコ/幻冬舎)で、何者にもなれない若者の青春を描き、小説家としての第一歩を踏み出したWebライター・カツセマサヒコさんだ。

 今回の対談は、そのカツセさんからのラブコールで実現した。小説を書くおふたりが、おたがいの著書を読んで感じたこ…

2021/4/15

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52ヘルツのクジラたち (単行本) / 感想・レビュー

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ろくせい@やまもとかねよし

盛り沢山の辛さが詰まった物語。主題は社会的弱者。近親者からの唐突で、理不尽で、凄惨な暴力。それは徹底した人格攻撃で、そんな利己的行為で支えられる残念な自己意識。血縁ゆえと子供に暴力する親の意識。愛ゆえと恋人に暴力する意識。社会的地位ゆえと顕然に差別する意識。男女性ゆえとトランスジェンダーに不寛容な意識。心をすり減らしながらこれらを甘受する悲痛な声の行方を探す。本書は、このような悲痛な声を発せさせるのは「ひとの理をわかっていない」と喝破。「ひとは最初こそもらう側やけど、いずれは与える側にならないかん」と。

2020/12/27

kou

悲しみの涙、切ない涙、感動の涙、喜びの涙・・・読んでいて、何度、泣いたか分からないくらい、涙が溢れてきた。世の中、酷い人は存在する。出会った事を後悔してしまう人も沢山いる。でも、それと同じくらい魂の部分から救ってくれる存在に出会える事もあると思う。この本を読みながら、しみじみと思った。人に優しくでき、明日も頑張ってみようと思える一冊だった。ちなみに、大分県は、ここまで田舎では無いと思う・・・いや思いたい(笑)。

2020/07/15

starbro

以前から気になっていた町田 そのこ、初読です。虐待、愛、贖罪、非常に悲しく切ない感涙作です。最期に僅かな救いがあり、安堵しました。タイトルも哀しく美しく秀逸です。今年のBEST20候補、著者の他の作品も読んでみたいと思います。

2020/06/14

さてさて

人は”群れ”の中で生きる生き物です。しかし、その中には無意識のうちに聞き逃してしまう声もあるのだと思います。聞こうとしなければ聞こえてこない声もあるのだと思います。そして、ニュースとなって初めて、そこに”声なき声”を発していた人がいたことを知る私たち。”声なき声”の存在を『クジラ』という存在を象徴的に重ね合わせて描いていくこの作品。手を差し伸べられた過去を思い、手を差し伸べる側に回る貴湖。”ひとりじゃない”、と”声なき声”に光が当たるその結末に、”群れ”で生きる人間社会に救いの光を見た、そんな作品でした。

2021/01/09

ヴェネツィア

町田そのこは初読。この人の文体は、地の文までが口語話体に限りなく近い。したがって、読者の中には親近感と共感性を強く持つ人もいるだろう。すなわち私(読者)の語りに強く近接しているのである。内容的には2つの児童虐待を描いているのだが、その語りの方法もまたいたって卑近である。そうであるだけに、これも読者に共感されやすいと思われる。タイトルにも取られたクジラの歌は、大江健三郎の『洪水はわが魂に及び』に描かれていたが、町田がそれに触発されたものかどうかはわからない。あるいは全く別のソースであったのかもしれない。⇒

2023/10/11

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