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どくろ杯 (中公文庫 か 18-7)

どくろ杯 (中公文庫 か 18-7)

どくろ杯 (中公文庫 か 18-7)

作家
金子光晴
出版社
中央公論新社
発売日
2004-08-25
ISBN
9784122044067
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どくろ杯 (中公文庫 か 18-7) / 感想・レビュー

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HIRO1970

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎リハビリ25冊目。旅紀行物のルーツとも言えるどくろ杯。金子さんはお初です。先日亡くなった私の祖母の生年である1920年の関東大震災から物語は始まります。著者はこの100年前からの自伝を40年後に回想して3部冊にしています。(まだ2冊もあるのでかなり嬉しい!)本書では今のバックパッカーが言うところの沈没を上海、香港、シンガポールで繰り返しながら巴里を目指します。本や絵を同胞に売り捌き生活の糧を得て次の目的地までの旅費を工面する。当時の風俗史としても圧巻の内容で類を見ない一級品でした。

2019/09/13

こばまり

この逃避行に殆ど憧れを抱いてしまう。より雰囲気を味わいたくて、多く流布する晩年のものでなく若き日の筆者の写真を眺めつつ読む。「…ほんとに、そうね。」自室で夕暮れ時、声に出して相槌を打った己に驚く。

2018/08/04

syaori

語られるのは、7年にわたる「めあても金もなし」の作者の「欧州船旅」の前段。その発端は、関東大震災を契機にした当時の鬱屈した社会情勢と若さの「偏見と無惨」に満ちている。女学生との恋愛と妊娠、結婚、若い自意識と「貧乏の惨憺たる苦味」が覆う毎日と。しかし、その「性と、生死の不安の底につきまぜた」「酸っぱい人間臭」のする生活や旅からは鈍い焔が揺らめくよう。「泥沼の底に眼を閉じて沈んでゆく」ような日々の一体どこからこの煌びやかなものが現れるのか。ただ、それに目を奪われた自分は、もうこの旅に付き合うしかないようです。

2019/06/05

zirou1984

明治から大正、昭和を生きた反骨の詩人による回想録、という枠を超えた言葉の爆弾。立て板に汚水とでも言うべき放蕩と貧困の生活を続け、金策の当てもなく妻と上海へと渡るその様相だけでも相当の無頼振りなのだが、それを表す言葉の数々がもう破格なのだ。著者の前では人間というものが等しく体液に塗れた糞袋として見えていながら、その内側から詩情というものは立ち昇っていることを決して見逃さない眼差し。困難な日々という泥沼の底に沈んていく人間性がぼろぼろとこぼれ落ちている。生きるって何だろう。きっとこういうことなんだろう。

2016/02/09

Mishima

かつて金子光晴を読んだ際、見知らぬ街の暗闇の路地を延々と彷徨している気分を味わった。自分を見失いたくなる時にうってつけの本である。が、今回の本は期待をそらした。あてどもない放浪記が綴られる。素寒貧の状態でも金策をしながら旅を続ける。恋人を日本に残してきた妻を同伴しての旅である。何もかも破天荒な日々が、何かしら妙な楽天さともとれる成り行き任せの気まぐれさで綴られる。さすが、金子光晴である。そして、最後夫人をパリにひとり送り込んでマレイ半島からクアラルンプールへと縦断旅行へ。大陸の内情の凄まじさよ。

2018/08/31

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