雪の階(上) (中公文庫 お 64-2)
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雪の階(上) (中公文庫 お 64-2) / 感想・レビュー
rico
独特の、少し古風な感じのする文体が最初ひっかっかたけど、すぐ気にならなくなる。ぐいぐい引き込まれる。大正デモクラシーの残滓が排斥され、軍部が力を持ち、挙国一致で戦いに向かうための準備が着々と整えられていた昭和初期。美しき伯爵令嬢を中心に、その一族、心中した親友、暗躍する政治家や軍人たち、幼なじみの女性カメラマン、ドイツの音楽家、ヒトラーの影、不思議な幻影・・・。様々な要素が重層的にからまり合い、不穏な空気をまといながら、加速していく。この先には87年前のあの事件が待っている。下巻へ進みます。
2023/02/23
ゆきらぱ
始まりのページからがっちり引き込まれてしまいました。明治神宮外苑近くの公爵邸の音楽会で華族の娘・惟佐子の登場が着ている色留、持っているキリムのバッグなど細かに描かれて鮮やかでした。その上、惟佐子は美しいが数学好きで虫も平気、自分の部屋は和室が好みという惹きつけられるギャップをばっちり持った二十歳の女性で行動が気になりひたすらに読みました。途中から出てくる千代子、女子美出の記者ですがこちらの登場で更に面白く。さて、舞台は日の光と書く日光。すごく気になるところで「つづく」になってしまった。下巻楽しみ〜
2021/02/08
みつ
数学と囲碁が得意な伯爵家令嬢を主人公に据えた戦前(昭和10年前後?)の物語。流麗な文章の美しさにまず魅せられる。青年将校たちの語る理想国家論は、この先間もなく起こる大事件を予期させながら、意外な展開へ。政界の黒幕でありながら娘に敬語で接する伯爵の描写も面白いが、二章になって初めて登場する女性カメラマン千代子と男性新聞記者蔵原がふたりで謎を追う際の会話で、物語は俄然魅力的に。殊に互いの「心の声」(「これほどいい音をさせて沢庵を齧る人を自分はかつて知らぬ」とは千代子の食べっぷりへの感想)が物語に生気を与える。
2023/01/15
白いワンコ
冒頭から「ギュンター・シュルツ」「ピタゴラスの天体」「オルペウスの音階」そして「心霊音楽協会」…困惑と魅惑に激しく音立てる血流!そういえばこの時代性!!と沸き上がる歓喜を抑えられない!!!垣間に散らばるクラシック・ジャズの音楽要素に心踊らせ、一見固いが知る人にはこの上なくユーモラスな文体も嬉しい限りなのに、それでいて極上ミステリー作品なのだから、そりゃ血圧も上がるというものですわ…
2021/03/12
Shun
昭和10年、華族の娘・惟佐子は親友・寿子の心中事件を不審に思いひそかに調べ始める。報道によると傍らで亡くなった男は以前、茶の席で惟佐子に演説をぶった陸軍士官であったことが分かり、その印象から二人に何があったのか見当もつかない。この事件を追うと同時に父・笹宮伯爵が熱く弁を振るう天皇機関説だの国体だのと昭和初期の陸軍が増長してゆく風潮にも注目します。これから起きるであろう二・二六事件前夜という雰囲気が緊張を否応なく高め、また自然描写一つとっても厳かで張り詰めた世界を感じさせる表現凄まじく、とても雰囲気が良い。
2020/12/31
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- 出版社
- 光村図書出版
- 発売日
- 2023-06-26
- ISBN
- 9784813804383