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大岡昇平『野火』 2017年8月 (100分 de 名著)

大岡昇平『野火』 2017年8月 (100分 de 名著)

大岡昇平『野火』 2017年8月 (100分 de 名著)

作家
島田雅彦
出版社
NHK出版
発売日
2017-07-24
ISBN
9784142230778
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大岡昇平『野火』 2017年8月 (100分 de 名著) / 感想・レビュー

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佐島楓

こういうワンクッションを挟むことで、テキストにより客観的に触れられるようになる。あまりにも陰惨で、手に取るのを躊躇しながら最近再読した『野火』。極限状態にある人間の感情、行動を深くのぞき込む行為そのものに対する欲求が創作の原動力だったのかもしれない。

2017/08/12

入江

昔に読んだつもりだったが、解説をきくと別物に感じた。大岡昇平という人となり。戦争は狩りではないのに、原始的な営みに近づき、獲物は近くにいる仲間になる。信仰をもつのではなく、信仰されるものにまでなりそうな哲学を手にする主人公。「レイテ戦記」「武蔵野夫人」と併せて再読したい。

2017/09/01

かふ

『野火』は最初「狂人日記」という戦争から帰ってきて東京の精神病院の男の手記から始まったけど、書き直しでダンテ『神曲』の「地獄変」を模すようなフィリピンのジャングルを彷徨う兵隊の田村になったという。ここに登場する日本兵がゾンビなのは頷ける。ダンテ『神曲』の「地獄変」はローマ詩人のウェルギリウスに導かれて「地獄」に落ちた欲望深い人間たちを見るのだが、『野火』では導いてくれるウェルギリウスがいない。

2017/08/31

すずき

100分で名著は武内陶子アナがやっていた時以来数年観ていないが、大岡の評伝ならまだしも直球で『野火』読解の手がかりになりそうな本が意外と少なく試しに手に取ってみたら、思いのほか詳しい。NHKパワーで写真や資料も多くけっこう役に立つ。ただし、やはり文献表がないのは痛い。島田の読みには初めの方は同意できないところも所々あったが、言われてみれば納得させられる部分も多い。『野火』は反戦小説というジャンル分けに画定することの難しい多面的な作品であるという結論のような結論でないような見解には同意する。

2020/04/08

HALI_HALI

壮絶な戦場から帰還した後に大岡昇平が綴った小説、『野火』をコンパクトに解説。この小説を単なる反戦小説ではなく、戦場を通じて触れた人間の孤独や、人の営みを複雑さを描いた作品だと述べている。塩や煙草が金の代わりになった戦場の経済活動、食人という禁忌に隣合わせの環境で思い至った食に関する感情など、とても重々しい。本テキストの最後には、"国家に全てを任せ、戦争を賛成するスーツ姿の子供は、今一度、『野火』を読み返すべき"という内容がある。まさに。

2017/10/09

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