月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 1748)
月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 1748) / 感想・レビュー
ヴェルナーの日記
いかにもハイラインらしい作品。いわゆる反骨精神旺盛でアメリカン・スピリッツに溢れる作品ではないだろうか?月移住民と地球政府との星間戦争を描いている。地球は宇宙艦隊を月に派遣し、月はカタパルトで地球にゴミ屑を投下して対抗する。この物語の面白さは、ナンセンスなアメリカン・ジョークともいえる破天荒な箇所であるが、“SF”として、2つの星間における物資のやり取りに不均衡が発生すると(本物語の場合、月の質量が減少)、互いの引力・斥力にズレが生じて周回軌道が保てなくなるというコアな設定をしているところが興味深かった。
2016/04/29
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
罪人の流刑地だった月世界は、新世代が生まれても地球の植民地として搾取され続けていた。自由と人間らしい生活を求めて、3人の月世界人と一基のコンピュータは独立のための闘いを開始する。兵器はおろか、宇宙船の一隻すら持っていない彼らは、綿密な計画を立て月の住民たちの心を一つにしていく。主人公マニーとの交流で《人格》を形成していくコンピュータ「マイク」が実に魅力的。『2001年宇宙の旅』の「HAL」を思い浮かべたが、ずっと知的でユーモアのセンスも持っている。初出は1965年! 60年代のSFはキラ星のようだ。
2015/09/29
at-sushi@ナートゥをご存知か?
まず、本作の小骨を外し、軽く湯がいてアクを取ります。次に予めブツ切りにしておいた「宇宙の戦士」と合わせ、醤油と酒で15分中火で煮込み、仕上げに赤い彗星を加えます。出来たものがこちら「機動戦士ガンダム」です♪っつーぐらい影響力凄いw 「神は細部に宿る」というが、家系婚や革命細胞の構築、意思を持ったコンピューター・マイクとサブ機(馬鹿息子)のデータリンク等、ディテールの細やかさこそハインラインの真骨頂な気がする。面白かった。
2018/09/22
かのこ
読友さんのランキングを参考に。西暦2076年、犯罪者の流刑地となった月世界植民地。意思を持つ巨大コンピューター『マイク』をブレーンとした、一隻の宇宙船も一発のミサイルも保有していない月世界人の独立のための闘いを描くSF小説。寝落ち→忘却→寝落ち…を繰り返していたけど、我らのマドンナ・ワイオミング・ノットが登場した辺りから一気に作品の世界が輝きだした。さらりと語られる彼らの結婚生活や寿命の設定が実に面白い。結末はやはり…だったけれど、ラスト一行はなんともこの作品らしくて好き。海外SFを面白く読めて満足!
2018/02/22
催涙雨
植民地の独立戦争や革命の舞台を月(と地球)に移した作品。舞台が変わることによって役者も変わり、宇宙船やAIなどのSF的舞台装置が重要な役割を担う。のだが、物理的に距離が遠いこともあってか戦争らしい戦争をすることはほとんどなく、謀や政争のような話が延々と続く。月内部の人間ドラマみたいなものにウエイトが置かれているらしく、支配者であり敵としての位置付けにある地球側との直接的なやり取り自体がそもそもあまり多くない。一応どれも面白いとは思っているのだが、ハインラインの作品はどうも好みを絶妙に外してくるものが多い。
2020/06/29
感想・レビューをもっと見る