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ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫 JA イ 7-7)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫 JA イ 7-7)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫 JA イ 7-7)

作家
伊藤計劃
redjuice
出版社
早川書房
発売日
2014-08-08
ISBN
9784150311667
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ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫 JA イ 7-7) / 感想・レビュー

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ハッシー

【ユートピアの限界】▶平和で優しさに満ち溢れた世界は理想郷ではなく、地獄だった。真綿で首を絞められるように「やさしさ」がじわじわと、空気や雰囲気を伝って意思を制限していく。全ての人々が幸せである世界では、わたしが「わたし」であることを許さない。▶膨大な知識量と理論に裏打ちされた世界観の構成がSFを現実の物語のように感じさせる。人間の「意思・意識」について根源的な問いかけを提起した作品。

2017/04/24

おかむー

純粋な伊藤計劃オリジナル長編としては『虐殺器官』とこの『ハーモニー』だけなのだね。哲学的なところは同じだけど『虐殺機関』よりは読みやすかったかな。『よくできました』。医療が発達し、優しい倫理で人々が支えあう“しあわせなセカイ”、その世界の息苦しさを嫌悪する主人公・トァンの視点は意地悪くとらえれば実に中二病ではあるけれど、結末に至ればそれも納得。物語の最後に到達したのは“補完された世界”なのか“人類すべてが哲学的ゾンビになった世界”なのか。それはともかく巻末のインタビューと解説も理屈っぽくて難しい(笑)

2016/04/28

藤月はな(灯れ松明の火)

最近、嫌だなと思ったのは「禁煙教室」のCMである。社会がじわじわと『幼女と煙草』のような「公共の幸福」のために「個人の意思による選択による幸福」を強烈にバッシングする世界になりつつあると感じるからだ。しかし、そんな世界に抵抗するのに個人の力は余りにも無力だ。だからこそ、折り合いをつけなければならない。しかし、折り合いをつけたとしても「個人の意思」があり続ければ、永遠に幸福になることはできない。あなたは、絶望を感じることができる「個人の意思」と永遠に幸福だと思う「公共の幸福」のどちらを選択しますか?

2015/01/06

藤月はな(灯れ松明の火)

以前、父は晩酌の席で織田信長の言葉を引き、「今の長寿高齢社会は異常だ」と言っていた。以前はカロリーが低いマーガリンが持て囃されていたのに今ではマーガリンはアルツハイマー病を引き起こすかもしれないトランス脂肪酸を含むと発表された。価値は逆転しながらもじわじわと健康的で静かなヒステリーとも言える身体・精神共に健康志向になりつつある今だからこそ、この作品の空気は息苦しい。そしてPSYCHO-PASS2の鹿矛囲にも共通していた「人は自分の思い通りになる」と考える傲慢さを打ち砕いたのはトァンではなく、キアンだと思う

2015/11/07

里愛乍

映画を観て再読。初読時から内容も構成も面白くて大好きでしたが、彼の記録や時評、関連小説を読んで、私にとって少し違う意味が加えられた。ああ、これは、この小説は、本は伊藤計劃氏そのものなんだ、と。彼の好きな映画や小説等で影響を受けてきたもの、体験してきたことや考えてきたこと、それらが全て詰まっている。私がここまで本書に惹かれるのはきっと、彼自身の言葉、意思的なものを感じずにはいられないから。彼は本当に言葉となり、物質化し、映像化し、物語となって、私も含めて今生きている人々の中で寄生しているのかもしれない。

2015/11/23

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