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昨日 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

昨日 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

昨日 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

作家
アゴタ・クリストフ
Agota Kristof
堀茂樹
出版社
早川書房
発売日
1995-11-01
ISBN
9784152079756
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昨日 (ハヤカワ・ノヴェルズ) / 感想・レビュー

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マリリン

独特な文体の所以は著者が生き抜くための選択でもあったのか。主人公“私”の生き方に自身の体験を反映させたのか。 来日記念講演『母語と敵語』を読み、さらに深淵にある時代背景を想うと、既読の三部作の情景が脳裏をよぎる。無意識に綴られたような幻想的な世界を生きざるを得なかった、あえて母語ではない言葉で書きざるを得なかった、誰が誰なのか?いるのかいないのか?ここがどこなのなのか? “私”が言った「母語はいっさい忘れていません」という言葉...思いのほか深いところに宿る著者の生き様が伝わってきた。

2023/11/28

yumiha

『悪童日記』シリーズには書かれていなかった亡命生活を描く。が、双子は出てこない(残念)。予想通りの過酷な日々。「単調な仕事。情けなるほどの薄給。孤独」は、日本における外国人労働者を思い浮かべてしまう。後半に、アゴタ・クリストフの来日記念講演『母語と敵語』がある。赤ん坊を連れての亡命は、なおいっそう過酷で危険だ。被侵略の側は、言葉を奪われる。存在そのものを奪われる。だから侵略する側は、必ず言葉を奪うことで支配を行き渡らせる。

2019/04/07

空猫

著者の作品は戯曲以外読破したつもりだったがお気に入りにさんのレビューで本作が未読だったことを知り。A・クリストフの作品は[悪童日記]から一貫して国を、母国語を剥奪されることへの哀しみを描いている。今作はほぼ自伝的な内容でその精神の、魂の混沌を一番赤裸々に語った作品ではないだろうか。物理的な破壊はもちろんだが、心の、アイデンティティの蹂躙は一生禍根を残す。緩慢な自死のなかそれでも日常を受け入れ生きるしかなく…。書くことで正気を保っていたのか。平和ボケの自分には想像することしかできないのだ。

2017/06/06

taku

永遠に異邦の人である亡命者。母国と異なる言語の国で、名前を変え、明日に夢を見ることなく過ぎていく日々。ふと見つけた希望の前に立ちはだかるのは現実。全体が悲しみに覆われているけど、決して暗くはない。抑制された客観的な語り口は詩的な叙情を漂わせる。巻末の講演会録を読むと、作者の経験を重ねたこの物語に、どれ程の思いが込められているのか計り知れない。悪童日記のような刺激性はないけど作風はいい。ただ、主人公のストーカー行為を知っても惹かれていく女性ってどうなのよ。ここは解せん。

2016/08/07

mstr_kk

無性に読みたくなり、十数年ぶりに通読しました。5、6回目でしょうか。青春時代には、ただただ言葉に酔いしれていましたが、今読むと、随所に込められた意味に気づくこともでき、新しい感動も味わいました。『悪童日記』3部作とともに大好きだった作品で、極限的に簡潔なのに奇跡のように美しい文章は、今も僕にとって色褪せていません。以前よりも生きることの悲しみ、孤独、苦さがわかったぶん、より深く楽しめたかもしれません。奥付を見たら1995年の初版でした。

2021/07/26

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