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オリーヴ・キタリッジ、ふたたび

オリーヴ・キタリッジ、ふたたび

オリーヴ・キタリッジ、ふたたび

作家
エリザベス ストラウト
小川高義
出版社
早川書房
発売日
2020-12-17
ISBN
9784152099884
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オリーヴ・キタリッジ、ふたたび / 感想・レビュー

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kaoru

メイン州の架空の町クロズビーに住む元中学教師オリーヴの晩年を描く短編集。率直で口が悪いが時には妙に愛される彼女は二人の夫に死別し、息子との不和や老齢の孤独と不便に直面するが持ち前のたくましさで何とか局面を切り開く。彼女を取り巻く世代間のギャップや価値観の変質を通じアメリカ社会、つまり世界の変容が描かれる。「みんな抱えるものがあって生きている」とは町の弁護士バーニーの言葉。のどかな町にも銃犯罪やドラッグの影は色濃い。ラスト近くでは古き良きアメリカの価値観を粉砕するトランプ候補の存在がオリーヴの心を脅かす。⇒

2021/08/20

ちゃちゃ

老年期とは如何なるものか。86歳のオリーヴがひとつの示唆を与えてくれる。小さな田舎町に暮らし偏屈で周囲の思惑を気にせず、ともすれば周りから疎まれるのにどこか憎めないオリーヴ。二人の夫を看取り自らも老人施設に入所して、遠い先に漠然とあった老いに絡め取られる。「そろそろ死ぬのだ。えらいこっちゃと思った」…あのオリーヴが死への恐怖と孤独に震える日々を過ごすとは。けれど、作者(訳者)の筆のなんと真率で魅力的なことか。老いとの折り合いの付け方を乾いた筆致で描き、それなのに人生の哀歓がしみじみと心に響く秀作だ。

2021/07/14

アン

正直で気どらず、少し怒りっぽいけれど無条件に相手を思いやれる…そんなオリーヴに再会できたことがとても嬉しい。アメリカ北東部メイン州にある海辺の町。長年連れ添った夫を亡くし老齢期を迎えたオリーヴと人々の心の騒めきを繊細に綴る連作短篇集。再会した昔の生徒の病状を心配する「光」、蘇る思い出と動揺「ペディキュア」、一人暮らしが難しくなる「心臓」など13篇。誰もが引きずる苦い記憶、抱える孤独、老いへの苛立ちや怯え。黄金色に輝く二月の光、それは安らぎと奇跡の光。そして寄り添ってくれるあたたかい光でもある気がします。

2021/02/12

buchipanda3

オリーヴ・キタリッジ、相変わらず不思議な魅力のある女性だった。古風なニューイングランド北部の町でずっと暮らしているおばさん、いやもうお婆さんか。どこが良いかというと自分を偽らない正直なところ。その分、クセがあるがブレない颯爽とした言動に惹かれる。ただ今作では老いる自身を見つめるだけに、その心情の揺れの真っ直ぐな描写に読み手も老いへの不安に囚われた。それでも彼女らしい気持ちを失わない人間味ある姿が残る。特別ではない人生、でも個々に深みがある。彼女が好きと言った雪深い土地の二月の光を思い浮かべて本を閉じた。

2023/12/07

アキ

オリーヴの続編。74歳になりジャックと再婚した。そうして8年連れ添い、彼も逝った。86歳になり、周りの人達はいつの間にかいなくなっていた。数学の授業中「みんな、自分のことはわかるでしょ。自分に目を向けて、耳をすませる。どんな人間かわかるよね。それを忘れちゃだめよ」と言った。人生の終わりがけに自分をゆっくり振り返ると、2人の男に愛されたことを思う。息子も最後にこっちを向いてくれた。もし、気に入らないとしたら、このいまいましい自分なのだ。でも、今さら思っても、しょうがない。ままならないのは、いつも自分自身。→

2022/02/15

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